1212│夏狩薬師

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ソース場所:都留市夏狩240 長慶寺

●ソース元 :・ 内藤恭義(平成3年)「郡内の民話」 なまよみ出版
       ・ 現地説明板
●画像撮影  : 2017年06月10日
●データ公開 : 2017年06月24日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他   : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。

[概要]

夏狩薬師 (都留市夏狩240 長慶寺 本尊)

谷村(都留市)に眼病のため盲目になった娘がいた。母親は、めしいたわが子が不びんでならなかった。母親は常日ごろ、眼病に霊験あらたかたいわれる夏狩(都留市)の長慶寺の薬師如来を信仰し「娘の目が治るものなら治してやりたい。できることなら自分の目と交換して欲しい」と祈っていた。
ところがある日、立派な装束をした祈祷師が尋ねてきて「私が祈祷すれば必ず七日で目が見えるようになる」と言うので、わらをもつかみたい心情から、祈祷してもらいたいとたのんだ。すると祈梼師は「祈祷料は七両ニ分だが、そろえることができるか」と言った。十両盗めば首がとぶといわれる時代で七両二分というお金は大金であったが、つましい生活をして貯えてきたお金があった。
「自分が死んでも、娘が生きていけるようにと、爪に火を灯すようなくらしで貯えたお金だが、娘の目が治るものなら貯えはいらなくなった。これも仏様の加護であろう。」と期待に心はずませ何の疑いもなしに七両二分のお金を渡した。祈祷師は「明日から七日間の祈祷に入るので夏狩の薬師堂へくるように」と言って立ち去った。
翌日、決められた時刻に薬師参りに行ったが、祈祷師はこなかった。やむなく一人で娘の眼病治癒を祈って戻ったが、不思議なことに娘は「明るさが感じられるようになった」といった。二日目も祈祷師は現れなかったが、同じようにお参りして戻ると、娘は「ぼんやりだが近くの物の形が映るようだ」という。こうして三日目には「霞がとれた」といい、やがて七日目にはすっかり完治した。
母親は、訴祷師にお礼をしたかったが、祈祷師は一向に現れなかった。月に一度の薬師へのお礼参りを続けてちょうど一年目、薬師堂の前に、ひたすらに祈りを捧げている乞食同然の僧形の男がぬかずいていた。見れば姿かたちは変っているが、いつかお会いしてお礼を申し上げたいと片時も忘れることのできなかった、めしいた娘の目を治してくれたあの祈祷師ではないか。見る影もない姿となり、しかもどうやらめしいていられるようである。
母親は名乗りでて「あなた様のおかげで薬師様が願をかなえてくれた」と礼を言って盲目となったわけを聞くと「あなたと薬師様をだましたので罰があたり、このようにめしいとなった。今、先非を悔い、薬師様におわびをしているところだが、こうしてあなたにもお会いできおわびができてうれしい」と、心からわびた。
「恩人であるあなたを恨んではいません。あなたがだます気だったら、いまはもう深く悔い改めているあなたを、み仏はお許しになるはずです」と母親が言うと、祈祷師は「ありがたいお言葉です。私の心もこれで晴れます」と言ったその目から、涙が二条三条とほおを伝って、流れた。とその時、めしいた目から生きた光が走った。祈祷師の目に光が戻った。ありがたいことだと薬師を拝もうとすると、薬師の目は静かに閉じていた。

内藤恭義(平成3年)「郡内の民話」 なまよみ出版
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平成の名水百選
・  長慶寺[ちょうけいじ]
正式には、臨済宗妙心寺派石頭山長慶禅寺[りんざいしゅう みょうしんじは せきとうざん ちょうけいぜんじ]と言い、寛正三年(一四六二年)に天台宗の行者の大淵阿闍梨様[おおぶちあじゃりさま]が長慶庵を開創したのが始まりと言われています。
元亀元年(一五七〇年)鎌倉建長寺より来た五峰東原禅師[ごほうとうげんぜんじ]により臨済宗に改宗し、本堂が造営され庵を寺と改め開山し現在に至っています。
本尊は、薬師如来で鎌倉時代の作と伝えられており、由緒によると「昔 小沼村下暮地(現 西桂町)に護満長者[ごまんちょうじゃ]あり。薬師如来を安置し尊厳せしも、長者の家絶えて 後は薬師堂のみ存せしに、富士の雪解け水俄かに出て、堂宇[どうう]を押し流し本尊は当寺の池(御所泉)に止りそれを安置す」と記録されています。
毎年、十月十一日には例祭祈祷が行われ、眼の薬師として人々の信仰を広く受けているご本尊です。
境内の周辺には豊富に水が湧き出て、その中には清流の中でしか生育しないと言われる梅花藻[ばいかも]が、初夏から初秋にかけ白く可憐な花を咲かせています。
・     平成二十四年三月     都留市  (境内の説明板より)
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富士急行線 十日市場駅から東桂駅にかけての沿線は、十日市場・夏狩湧水群として知られ、都留市の水源地であり、豊富な湧水利用の水掛菜の栽培や川魚の養殖でも有名です。

長慶寺周辺にも長慶薬師霊命水源や太郎次郎滝といった見所も多い場所です。長慶寺本堂前に流れるひさご型の流れは、江戸時代に眼病を患った谷村藩主「鳥居土佐の守様御令女」が参拝のおり、眼を洗眼したところ治ったという言い伝えが残る薬師洗眼の水がある。ご本尊は正月三が日、薬師縁日のご開帳時にしかご尊顔を拝めないのでこちらで眼病のよくなる事を祈願することも出来る。また本堂前の大木の根元からも湧水が溢れ出ている。これらの豊かな湧水には毎年五月下旬から七月下旬にかけて清流でしか育たない梅花藻がいっせいに白い可憐な花を咲かせます。

また長慶寺の薬師如来像は、むかし、西桂町の護満長者が薬師堂を建て安置したが、長者の家が絶え(0382「長者屋敷」、「思い川」参照)、その後荒れた薬師堂を雪解け水が流してしまい、薬師如来像が長慶寺近くの泉まで流れ着いたものを安置したといわれている。

 

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