1288│河童の知恵③ 河童の膏薬

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ソース場所:富士河口湖町船津3964 富士博物館 河童大明神

●ソース元 :・ 内藤恭義(平成3年)「郡内の民話」 なまよみ出版
●画像撮影  : 201年月日
●データ公開 : 2017年12月08日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他   : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。

 

[概要]

河童の知恵③ 河童の膏薬

またしても人間の知恵に負け、毒にやられて気力も体力もすっかり萎えた河童は、浮き草がただようように川の流れに身をまかせ流されていたが、桂川に出るころにはすっかり生気が甦った。
河童は再び安住の居所を求めて桂川を遡り、十日市場から分れる柄杓流(しゃくながれ)に入った。昔、河口湖で水を汲んでいた女がうっかり柄杓を落したら湖中に吸い込まれて見えなくなった。何日かたって三ッ峠の東側を流れる川に柄杓が浮いているのが発見されて「河口湖には底に穴があって山の下をくぐり三ッ峠の東麓に出るのだろう」ということで以来この川を柄杓流と呼ぶようになったという川である。
「これが河口湖に通じる川だな、今度こそ人間様になんかつかまりっこない、大きな湖に出れるんだな」と思うと心がはずんで、カジカやアユやヤマメをもりもりたベて体力をつけ、水のほとばしり出る穴口へたどりついた。トンネルのようになった水路は湖水の水圧で水泳の達人である河童でも逆らって泳ぐのは大変だった。腕は伸縮自在、指先には吸盤がついていて吸いついたら離れない。体は軟体動物のように小さな穴でもすりぬけ、しかも水の中では怪力無双という大変な特技をもっていたから何とかくぐり抜けれたものの、やっとの思いで河口湖に浮かんだときには、もうふらふらで岸にたどりつくとバッタリ倒れてしまった。
河口湖の船津には、筒口といって湖水が地中に吸い込まれるためゴウゴウと音を立て、鳴戸の渦潮のように水が渦を巻き、どんな水泳の達人でも引き込まれたら助かりっこないというすさまじい渦巻きをみたさに、ここを訪れる人は絶えなかった。
河童がふらふらになりながなも渦に逆らって浮かんできたので人々は驚異の目を見張った。人間にはとてもかなわぬ力をまのあたりにみて人々は神の力を感じた。たたりでもあってはいけぬと、早速介抱してやると河童は素直に、「ありがとう」と礼をいって身をまかせた。やがて体力を快復し元気をとりもどすと、河童はお礼のしるしにやけどにきく膏薬の作り方を教えた。
まもなく河口の膏薬はよく効くと評判か立つようになると、人々は河童を神とあがめるようになり、河童の像をつくり河童大明神として祀った。
神と崇められた河童は、はじめのうちは人間に勝ったような気がしていい気分であったが、やがてまたしても人間の知恵にやられたことを知った。神に祀られたばかりに悪戯のできなくなったのがきゅうくつでたいくつでどうにもならないと悟ったときは後の祭りであった。
河口湖周辺にはいくつもあったという河童大明神だがいまは二ケ所だけが水難厄除け祈願のあかしを伝えているに過ぎない。

内藤恭義(平成3年)「郡内の民話」 なまよみ出版

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