0376│法善寺の鬼瓦

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ソース場所:南アルプス市加賀美3509 法善寺

●ソース元 :・ 冊子「法善寺のおにがわら」志摩 阿木夫 著    若草町商工会販路開拓支援委員会 発行
●画像撮影  : 2015年11月22日
●データ公開 : 2016年06月24日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他   : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。

[概 要]

法善寺の鬼瓦(若草の民話)

むかしむかし、甲府盆地の東にある大菩薩嶺の奥に、たいへん力の強い山ん姥が棲んでいて、たくさんの鬼を家来にしていました。 その山姥は毎年夏の終わりから秋にかけて、家来の鬼達に命じて、盆地の村々に悪い病気をまきちらせたり、大風を吹かせ大雨を降らせて、お百姓さんたちが苦労して育てた稲や、そのほかの農作物を台無しにして、うれしがっていました。 鬼達がいたずらをするために通る道は、きまって大菩薩嶺の奥から西の方の櫛形山の方向でしたから、特に櫛形山の近くの村々では、この季節の来るのを大変恐れていました。

そこである年のことです。毎年難儀をしている村々の名主が集まって相談をしました。 「こう毎年苦しい目に合わされていては、いまにどこの村も全滅してしまう、どうにかして鬼達を支配している山姥を退治する方法はないだろうか」 と思案にくれていました。 するとそのとき加賀美村野名主が進み出て、 「うちの村の法善寺に祀られている御大師様は、たいへん優れた法力をお持ちだから、ひとつ御大師様にみんなでお願いしてみてはどうだろう」 といいました。藁をもつかむ思いでいた名主たちでしたから、一も二もなく 「それがよかろう。さっそくそうしよう」 と、意見がまとまって、みんなで御大師様にお願いにいきました。

しかしこのことはすぐに山ん姥の耳に入ってしまいました。そこで山ん姥は家来の鬼達を集めて、御大師様の法力を打ち破って、村人たちをいっそう苦しめてやろうと考え、鬼たちをひとまとめにして自分も変身して、大きな大きな山ん姥の鬼を一匹つくりあげました。 いよいよ秋の収穫のときがきました。村人がせっせと取り入れに働いている時期を見計らって大鬼となった山ん姥は 「それ行け!!」 とばかり行動を始めました。 その日は雲一つない秋晴れだったのでしたが、急に大菩薩嶺の奥から真っ黒い雲が湧き出して、あれよあれよという間に盆地一帯に広まったと思うと、気味悪い風が音を立てて吹き出し、たちまち大粒の雨が降り出しました。 村人たちは 「それ山ん姥の鬼がくるぞ!!」 と、きもを冷しながら一斉に家の中へ逃げ込んで、震えていました。 大雨と大風に混じって雷が鳴りはじめ、釜無川の水はたちまち洪水を起こして、あたり一面の田んぼは水の底に埋まってしまいまして。 と、そのとき空いっぱいに広がるような大鬼が、大きな股を開いて櫛形山に飛び移ろうとするのが見えました。 村の人たちは必死に家の柱につかまって、 「南無大師様、南無大師様」と叫び続けました。

すると一瞬法善寺の屋根から、目の覚めるような光がピカピカっと走って、大鬼の目玉に突き刺さりました。そうするとどうでしょう。雲を突くような大鬼の体はたちまち、普通の大人ほどに小さくなって、空中でくるくるまわりながら、ドスーンと音を立てて、法善寺の北側の田んぼに落ちて、その姿も鬼ではなく山ん姥の姿になっていました。 村人たちが恐る恐る外へ出てみると、不思議なことに大風も大雨もピタリと止んで、あたりは何もなかったように、豊かな実りの景色が続いていました。 それに田んぼに落ちた山ん姥のところへ行ってみると、手足をピクピク動かして逃げ出すことも出来ず、目からは大粒の涙をポロポロと流していました。 村人たちはそれをみて 「これは御大師様の法力で金縛りにされているのだ。いい気味だ」 と口々に叫びながら、改めて御大師様の法力の強さに感心していました。

しばらくして、どこからともなく御大師様の尊い声が聞こえてきました。 「これこれ山ん姥よ、お前にかかった法力を解いてほしいか」 と、すると山ん姥は泣きながら 「どうかお許しください。早く金縛りの術を解いてください」 と御大師様に頼みました。御大師様はまたいいました。 「お前が二度と鬼を使って村々に禍をしないと約束するなら、すぐにでも術を解いてやろうが、どうだ」と 山ん姥は頭をペコペコさげて 「お約束します、どうかこの術を解いてください、解いてくだされば心を改めて、今までの罪を許してもらうように、一生懸命村々の幸せを守るように努めます。どうかお願いします」 といいました。 「よしよし、それならばこれからはお前の家来たちにも、力を合わせて村々を守るように、瓦で鬼の面を焼かせて、家々の屋根に飾り、家内安全・無病息災・五穀豊穣・商売繁盛の守護神になるようにせよ」 といって金縛りの術を解いてやりました。

山ん姥はさっそく御大師様との約束を守って、鬼の面をたくさん焼いて村々に配りました。 それからというものは、このあたりに悪い病気も流行せず、毎年毎年豊作が続き、村人たちは毎日楽しく豊かな日々を送るようになったので、鬼面の瓦は「厄除けの守護瓦」といわれたり「鬼門封じ瓦」ともいわれ、このことはたちまち評判となって、近郷近在はもちろん、隣の国やそのむこうの国々まで伝わって、鬼面瓦の里 加賀美の名と、鬼門封じ寺として法善寺の名は全国に知れわたるようになりました。

冊子「法善寺のおにがわら」  志摩 阿木夫 箸 若草町商工会販路開拓支援委員会 発行    より

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