0592│古宮(藤武神社)

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ソース場所:北杜市長坂町中丸1779

●ソース元 :・ 長坂町教育委員会(平成12年)「長坂のむかし話」 長坂町役場 
●画像撮影  : 2016年01月07日
●データ公開 : 2016年06月24日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他   : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。

[概 要]

古宮     (鳥久保)

古宮は、鳥久保の西にある森が深沢に向かってこぼれ落ちるあたりにある。ここは、下中丸にある藤武神社の古社地であったといわれ、いまも藤武神社の所有地になっている。また、古宮の北の平は宮久保と呼ばれている。
かつては中丸、鳥久保地域の人々の産土神として崇敬されていたのであろう。深沢を越えて古宮へと、今も草むした中に参道の面影を残している。
藤武神社が中丸の現在地に移ったことについて、次のような伝説がある。

宮久保の西に接した竹原は黒花と呼ばれ、むかし、黒花千軒といって繁華な集落があったそうだ。
黒花の首長は弓の名人であった。あるとき、村人を集めて弓の自慢をしたあげくに、古宮の森に棲んでいる神鹿を見て、
「よいか、みなのもの、あの鹿を一矢で射止めて見せようぞ」
と言い出した。村人たちは神罰を恐れ、口をそろえてその非を諌めた。しかし、彼は聞かなかった。
空高く晴れた晩秋の午後のこと、馬に乗り弓を小わきにした首長は古宮の森に向かった。そして社殿のかたわらにうずくまっている神鹿に狙いを定めて射た。村人はその結果を恐れるようにかたずを飲んで見ていた。と、不思議にも矢ははずれて鹿は悠然と立ちあがり、こちらをにらんでいるように見えた。自慢の鼻をへしおられ.カッとなった彼は第二の矢をつがえたが、そこにはもう鹿の姿は見えなかった。
ただ、神馬にまたがり居丈高にこちらをにらみすえ、馬に鞭をあてて南の方に走り去る神の姿が見えた。
彼は馬に鞭打ってその後を追おうとした。しかし、馬は一歩も進まなかった。あせって鞭を振るえば、ますます馬は動かず、果ては社前の大石に蹄を深く踏みこんでしまった。とうとう馬は彼の激しい鞭のために息絶えてしまった。
愛馬の死によって目覚めた首長は、力をなくし悄然と森を出ていった。住民たちもその後に従った。
折から赤く燃えた夕陽は黒花千軒の甍を深紅に染めた。
と、その瞬間ものすごい渦巻きが起こって黒花千軒はたちまち大地の底へと陥没してしまった。首長の後悔も及ばなかった。
ほどなくして、首長は死に、黒花集落は森林と化し、村人は四散した。
今は、ただ、深沢を見下ろす林の中に、古宮の伝説を伝える石の祠と、神馬が走り去る時にできた蹄の痕を残す大石があるだけである。

古宮の名の起こりについては、次のようないい伝えもある。
江戸時代、神社資産は神官の私有物に等しいような支配がされていた。そのことから、黒花集落の神社の神官と氏子との間に争いが起き、氏子が離反し神社は荒廃してしまった。たまたま、下中丸の心篤い敬神家の一団が神号額を奉遷し神社を移した。いつとはなしに、鳥久保の社は古宮と呼ばれるようになった。
(清水徳雄・『清春村誌』)

長坂町教育委員会(平成12年)「長坂のむかし話」 長坂町役場

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