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「YAMANASHI DESIGN ARCHIVES」は、山梨県に伝わる過去の優れた物品の造形や模様、自然から得られる色彩、今に伝わる昔話・伝説を、産業上で使用することのできるデザインソースとしてデジタル化して配信する山梨県のプロジェクトです。

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The “YAMANASHI DESIGN ARCHIVE” is a project in Yamanashi prefecture that distributes the design sources of shapes and patterns of fine goods that have been passed down in Yamanashi prefecture since the past, colors from nature, old tales and legends that have been passed down to the present, and written material that has existed in the region since ancient times through a digital format for industrial use. Please make use of these sources for product development, education and research, service development, etc.

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Old Tale

#0598

お随神さま

ソース場所:富士河口湖町勝山3951-1 富士御室浅間神社


●ソース元 :・ 内藤恭義(平成3年)「郡内の民話」 なまよみ出版
●画像撮影  : 2015年11月04日
●データ公開 : 2016年06月24日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他   : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。

[概 要] 富士河口湖町勝山にある富士御室浅間神社は美女で名高い木花咲耶姫を祀っている神社です。この女神さまは朝日と共に社へ降りてきて、夕暮れと共に富士へ帰っています。社殿の前方には随身門が備えられ眉目秀麗な若武者姿の「お随神さん」が、木花咲耶姫と社を守護していました。 近くに鸕鷀嶋神社があり、弁天様が祀られていて、その弁天様がちょっと色っぽい美神と評判が立っていました。お随身さん二神は「ちょっと覗きに行ってみたい」と日没を待って抜け出しました。鸕鷀嶋神社は河口湖に浮かぶ鵜の島にあり、そこまで何とかして行けないかと島まで沢山の岩を投げ入れ、渡り道を造ろうと苦心しているうちに夜が明けてしまいました。木花咲耶姫はかんかんに怒って、「お前たちのような浮気者の随神は要らぬ。私の護りは無邪気な稚児の方が良い」と二神は追い出され、可愛いらしいお随身様が守護するようになりました。

お随神さま  神社と言えば、神職の人達が心静かにしずしずとというようなイメージがありますが、お祀りされている神様はどうかと言えば、やきもち焼いたり、怒ったりと、とっても人間臭いお話が伝わってきます。
富士河口湖町勝山にある富士御室浅間神社は神様の中でも美女で名高い木花咲耶姫を祀っている立派な神社です。木花咲耶姫は朝日と共に社へ降りてきて、本殿で人々の願いを聞き、夕暮れと共に富士へ帰っています。社殿の前方には随身門が備えられ「お随神さん」と呼ばれる、体格良く眉目秀麗な若武者姿の二人の神様が、木花咲耶姫と社を守護していました。そのうち、参詣に訪れる人々のおしゃべりの中に、鵜の島に祀られた弁天さん(河口湖に浮かぶ鵜の島には天文23年[1554年]創建の鸕鷀嶋神社があり、弁天様が祀られている。舟など使わないと行くことが出来ない)の噂を耳にするようになりました。お随神さんたちは木花咲耶姫の美しさは知っていますし、誰よりも美しいと思っていましたが、弁天さんもたいそう美しいと聞き、ちょっと覗きに行ってみようと日没を待って随身門を抜け出した。鵜の島が見えるところまで行ったが、お随神さんたちは木花咲耶姫のように空を駆けることも出来ないので、島までたくさんの岩を投げ込んでなんとか歩いて渡れないかと作業に没頭した。気づくと夜が明け、木花咲耶姫をお迎えする時間になっていた。「迎えに現れないばかりか、よりによって他の女神に会いに行こうとするなんて!」木花咲耶姫はかんかんに怒って、「お前たちのような随神は要らぬ。私の護りはいっそのこと無邪気な稚児の方が良い!」と言った。それで、富士御室浅間神社の随身門には、可愛らしいお随神様が祀られるようになったそうです。

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お随神さま
御室浅間神社といえば、源義光もお参りしたという古いお社で、小林尾張守の庇護を受け、武田信玄もわざわざ娘の安産祈願や戦勝祈願に訪れたほどの神威をもった神社である。その里宮、勝山浅間神社は富士山の護り神、木花咲耶姫を祀る多くの浅間神社の中でも、とりわけ広い社叢の中に本殿、拝殿、幣殿は勿論、中門に随身門までそなえた立派な神社である。
随身門の中には土地の人から「お随神さん」と親しく呼ばれている弓矢を持った二人の神が左右に分れて紀祀られていた。体格よく、眉目秀麗な凛々しい若武者で姫と社とを守護する役を負っていた。
守護するといっても信者に悪い人があるわけでないし、せいぜい朝日のさすとき木花咲耶姫を出迎え夕日が沈むとき見送るくらいが仕事といえば仕事であった。木花咲耶姫は昼間のうちは訪れる参詣者のために本殿の中で願いごとを聞いているが、夕暮と共に富士に帰り、ほのかに朝の光がさしはじめる頃また社にもどってくるのである。富士を背に朝日に映える姫の姿といったら何に例えようもなく美しいものであった。お随神さんは男であるが、神々の中でも一番の美しい神をお護りできることに誇りと喜びを持ち、美しい姿に朝夕おめにかかることだけで満足していた。
こうしてお社が造られて以来、何十年も護り続けていたのであるが、近ごろ参詣に訪れる人が奇妙なことを言うようになったのに気がついた。
「お浅間さんにお参りしたらこんどは弁天さんにお参りに行こうね」とか「今度鵜の島に祀られた弁天さんは艶っぽくできれいだね」とか言っているのである。
いろいろな話を総合すると、富士のふもと、この浅間神社のすぐ下の河口湖に浮かぶ鵜の島に豊玉姫(とよたまひめ)という神様が化身して弁財尊天となり、その祠が造られて祀られているというのである。いつも琵琶を抱いている音楽芸能の神様であり、商売繁昌蓄財の神様であり、半裸の美人の神様であり、お釈迦様のお説法の意味が理解できない人にはお釈迦様に代って教えるというやさしい女神でもあるというので、多くの人々の信仰を得て、お弁天さんと呼ばれ親しまれているというのである。

この富士山でわが浅間さん以外にお参りする社があることなど考えてもみなかったことだが、木花咲耶姫以外の神様がいて、それも大層な美女だと聞くと、「我が守護する木花咲耶姫こそが日本一と信じているのに、そんな美女がいるとは聞きずてならぬ、どうしても行って確かめてみなければならない」と、禎察に行くことにした。それに安穏な日々が続くので、つい社叢のまわりを巡回するのを怠っていたうしろめたさもあって、お随神さんはおつとめの終る日没を待って久し振りに随身門を抜け出した。
河口湖畔におり立ってみると湖中に浮かぶ鵜の島がこんもりと闇の中に見えた。普通の神様なら天に昇り地に降り立つことはあたりまえのことだが、お随神さんは社を護るための神様である。天に昇るようでは社の護りがおろそかになるというので、昇天の神通力を授けられていなかったから、目の前にある島に渡ることができなかった。
やむを得ず、二人のお随神さんは一所懸命に岩をかついできては、湖へ授け込み、歩いて渡れるようにと仕事、に夢中になり、空が白みはじめても気づかず、夢中で働いたので、富士山に日の出の太陽の光がキラッと反射したときにはもう遅かった。
美しい女はおこり出すとおそろしい。日本一の美人といわれる神様だって同じである。山の背比ベで八ヶ岳をめちゃくちゃにぷんなぐったくらいだから気性は結構あらく、おこり出せば手がつけられなかった。夜明けとともに社に戻って来たというのに随神が迎えに出ていないので、かんかんに怒った姫はたちまち随神を探し出し、ことの次第も聞かずに、あと少しで地続きになるまでにでき上った地橋をめちゃめちゃに叩いて瘤だらけの岩にしてしまった。そのうえ「私以外の女に心を寄せようなんてとんでもないこと」と、やきもちまで起して随神をひどく叱りつけ、お前たちのような浮気者の随神はもういらぬ。この平和のシンボル富士山には悪い者は居らぬゆえ私の護りはいっそのこと無邪気な子供の方がよい」と北口浅間へ転勤命令を出してしまった。

こうして富士御室浅間里宮の随身門には大男に代ってお雛様のような可愛くてやさしいお顔のお随神様がまつられるようになり、秋の例祭には姫を乗せた御輿の渡御にあたって直接御輿を護るお髄神様だけでなく、お供の拍子木持や錫杖持ちまでもが子供達で供奉するようになった。

河口湖が減水すると、飛び石状態で鵜の島に渡れるような形になるが、こんな風景が見られるようになると、勝山湖畔の人々はいつも北口浅間へ行ってしまった御室浅開神社のお随神さんを思い出すのである。

内藤恭義(平成3年)「郡内の民話」 なまよみ出版

このデザインソースに関連する場所

富士河口湖町勝山3951 富士御室浅間神社

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山梨各地に伝わる昔話や伝説、言い伝えを収録しています。昔話等の舞台となった地域や場所、物品が特定できたものは取材によって現在の状態を撮影し、その画像も紹介しています。