1249│なめ婆さん

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ソース場所:南部町内船

●ソース元 :・ 土橋里木(1975年)全國昔話資料集成16甲州昔話集 岩崎美術社
●画像撮影  : 201年月日
●データ公開 : 2017年10月26日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他   : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。

 

[概要]

なめ婆さん
昔、河内(富士川の沿岸)の栄村に、年の頃三十五、六歳の女があって、土地の者は「なめ婆さん」と呼んでいた。この女は誰か病人があると、その病気の所をどこでも舐めてくれる。眼でも鼻でも、手でも足でも、頭ン痛ければ頭を、腹ン痛ければ腹を、どこでも悪い所を舐めてくれるが、このなめ婆さんに祇めてもらえば、不思議に効き目があって、病気がすぐに直るということである。「代は何ぼだえ」と言っても、「何ぼでもお志でええ」と答えて、代を受け取らぬ。祇めてもらった者は、そのなり(そのまま)はいられぬから、充分にお礼の金を包んで上げるのだが、そんな風で、なめ婆さんの療治はいつも大繁昌であった。
昔この女は若い頃、井戸端で芋を洗っていると、そこへ弘法様が廻って来た。弘法様は「水ゥ一ぱい呼んでくりょオ」と言ったが、女は面倒くさがって、「この水は馬ン飲む水だよ」と言って、井戸から水を汲んでやらなんだ。次に弘法様が「そんじゃアその芋を一つくりょオ」と言ったが、その女はまた「これァ馬ン食うものどオ」と言って、芋をもやらなんだ。それで弘法様は、仕方ァなくどこかへ立ち去ったが、その時から女の顔は、長い馬の顔になってしまった。
女は自分ではまだ気付かなんだが、やがて芋を洗って家へ帰ると、家の者がびっくりして、「汝ァ何ちう顔になっとオどオ」と言ってそのわけを聞き、「早くその和尚さんを呼び返せ」と言った。
急いで人を飛ばせて弘法様を呼び返し、「まことに申し訳アない。この娘の顔はどうしろば直るか、ぜひ教いておくんない」と言って謝り、御無心言うと弘法様は、「誰でもええから、病人の悪い所を舐めてやれば、だんだん馬の顔が直る」と言った。それから女は病人を誰でも祇めてやり、長い間舐め歩っているうちに、ようよう馬の顔が直って、人間の顔になったのだということである。
(昭和十七年三月十三日 土橋よしの婆様〔六十八歳〕)

土橋里木(1975年)全國昔話資料集成16甲州昔話集 岩崎美術社

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