1292│弘法奇跡① 水無川

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ソース場所:都留市与縄に伝わるお話

●ソース元 :・ 内藤恭義(平成3年)「郡内の民話」 なまよみ出版
●画像撮影  : 201年月日
●データ公開 : 2017年12月14日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他   : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。

 

[概要]

弘法奇跡 (ー)  水無川
弘法さまは、仏教を興隆させるために、諸国を歩かれた。
旅の途中、都留市にも足跡を残された。秋山から王旅峠を越えて、桂川の支流・朝日川沿いに点在する村々の人を集めては、仏さまのお話をされ、仏教を広めようとなされた。
弘法さまは、朝日郷で最後に残った与縄へと向かった。与縄までの道のりは、かなり長かった。夏の暑い日だったので、弘法さまものどがかわいた。人家が見えたので、村の一軒の戸をたたき「旅の僧でござるが、この家に福があるように経を読んで進ぜたいが、あつい夏の日で、のどがかわいてどうにもならぬ。まず、一杯のさ湯でござれ、水でござれ、飲ませてもらえまいか」と頼んだ。
しかし、うさんくさそうに話を聞いていたその家の女は『このだれとも分からぬ僧に、水をくみに行っている聞に、物でも盗まれては大変』と思って「お前にやるような水はない。それ、その前の川に水が流れておる。その水を飲めばよい」と断った。弘法さまは「困っている者を助けてやらぬことはよくないことだ。これから未来永劫、このことを忘れることのないよう、前の川の水を涸らして差し上げよう」と言って川に出ると、杖を三度突いて、何やら経を唱えた。すると不思議なことに、見る間に水が地下に浸み込んで、川の水はなくなってしまった。
それから弘法さまは旅を続けられ、井倉(地名)で再び杖を突き、経を読むと水が浸み出し、そこから下流は水の流れる川となった。
弘法さまが亡くなられて千百年以上もたつた今でも、雨でも降らない限り、朝日川は与縄で水無し川となり、日照りの折など大変困るのであるが、村の人たちは「困っているときは助け合わなければならない」という弘法さまの教えだと、この教えを固く守って、以来助け合いながら、飢饉のような難儀も切り抜けてきたので、水には困りながらも村人は平和に暮らしている。

内藤恭義(平成3年)「郡内の民話」 なまよみ出版

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