物語
Old Tale
#0506
四尾連湖の怪牛
ソース場所:西八代郡市川三郷町山保 四尾連湖
●ソース元 :・ 山梨県連合婦人会 編集・発行(平成元年)「ふるさとやまなしの民話」
●画像撮影 : 2015年10月16日
●データ公開 : 2016年06月24日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他 : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。
[概 要] 三~四百年ほど前、ひどい干ばつの年がありました。二人の兄弟武士が、自らも犠牲になりながら、四尾連湖に棲む怪牛を射殺すと、間もなく雨が降り出し、村人たちは救われました。兄弟は山頂に手厚く葬られ、干ばつの時には、村人たちは四尾連湖まで牛の頭を背負って登り、兄弟の墓に詣でてから、牛の頭に綱をつけ、湖水に投げ入れ雨乞いの儀式をしたそうです。
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四尾連湖は、蛾ヶ岳(ヒルガタケ)の山上にある、一周1.2kmほどの小さな湖です。「尾崎龍王」という四つの尾を連ねた龍神が住んでいるということで「四尾連湖」といわれるようになったそうです。
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四尾連湖の怪牛
今を去る昔、ある暑い夏の日のことでした。みるからにたくましい武者修業風の兄弟づれが二人、草深い山道をやって来て湖水にたどりつきました。
「いやあ、実に美しい眺めだ。」
と、兄が弟に声を掛けましたが、弟はどうした事かみるみる蒼白な顔となりその場に倒れ息絶えてしまったのです。兄は胸さわぎを覚えながら、はたと湖面を見たその時、今まで波一つない静かな湖面が波しぶきと共に小山のように盛り上り角を突き出した怪物が大きな目をきらつかせ、波間に姿を現わしました。そしてそのうめき声はあたりの山々に谺して耳をつんざくほどでした。
武士は、やおら気をとり直して弓に矢をつがえ怪物めがけて矢を放ちました。矢は見事に命中し、吹き上った鮮血はたちまち湖面を真赤に染めました。そしてついに怪牛の本性を現わした怪物は、すさまじい姿で湖面をのた打ち廻りました。この姿を見て、さすが気丈な兄も息絶えてしまったのです。
村人はあわれに思い、二人の武士を山頂に手厚く葬って供養をしました。この墓のあるところを、今では『でっち』と呼んでいます。
二人が死んだこの夏は、日照り続きで作物も枯れるほどでしたが、この兄弟の犠牲が天に通じたのか、間もなく雨が降り田畑を潤したので、村人は救われたのでした。
それ以来、旱魃が続くと近郷近在の農民は牛の首を背負って山に登り、先づ、『でっち』の墓に詣でてから鐘や太鼓を打ちならし、「四尾連のうみの黒雲、主を殺した腹いせに雨を降らせ給いな」
と、口々に大声で叫びながら湖畔を廻り、牛の頭に綱をつけて湖水に投げ入れ雨乞いをするのです。するとたちまち一天俄かにかき曇り、山をかけおりるのも間に合わない程の激しい雨が降る、といい伝えられているのです。(市川大門町)
山梨県連合婦人会 編集・発行(平成元年)「ふるさとやまなしの民話」
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