物語
Old Tale
#0595
生出神社(おいでじんじゃ)の白蛇
ソース場所:都留市井倉456 生出神社
●ソース元 :・ 内藤恭義(平成3年)「郡内の民話」 なまよみ出版
●画像撮影 : 2015年07月13日
●データ公開 : 2016年06月24日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他 : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。
[概 要] 都留市の生出神社は諸事願いごとのかなう神社として、厚い信仰を集めてきている。 昔、コレラが流行した時、深い信仰心を持った老婆が、唯一の家族である孫のコレラ罹患に絶望し、「せめて孫の命を最後に、コレラを鎮めて下さい」と心から神に祈った。気付くと目の前に白蛇がいて、静かに老婆を見ていた。老婆が白蛇を見ているのを確かめると、白蛇は御手洗場に行き水を飲むしぐさを見せた。老婆は、これを神様からの託宣と受け止め、御手洗場の水を汲み孫に与えた。すると孫は元気を取り戻した。当時の常識ではコレラの病人に水は飲ませてはならないとされていたが、他のコレラ患者にも拒まなければ、生出神社の神の水を飲ませ多くの命が救われたと伝わる。
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生出神社の白蛇
田原郷(都留市)の郷社 生出神社(おいでじんじゃ)は、諸事願いごとのかなう神社として、広い氏子組織をもち、厚い信仰を集めている。
初め、諏訪神社と称していたが、領主秋元侯のときに、世継ぎ誕生の祈願をしたところ、霊験あらたかに、男子出生の神授があったので、秋元侯命名により、生出神社となったと伝えられ、近郷近在の信仰をより厚くした。生命をはぐくむ神として安産祈願はもちろんのこと、病に苦しむ家族の平癒を願って、社を訪れる人々の絶えることはなかった。
ある年、病の中で最も恐れられていたコロリ(コレラ)が流行した。激しい下痢に見舞われ、その名の通り、かかった人は大概三日以内で命はなくなるという悪病である。
信心深い老婆があった。にもかかわらず、不運続きで、夫にも息子夫婦にも先立たれ、孫との二人暮らしであった。家系を継ぐのは孫しかいないと思うと、老婆の神への祈りは一層深まった。しかし、コロリは頼みとする孫までも襲った。
死病にとりつかれたと分かると、孫の命をあきらめた老婆の祈りが変った。
「孫の命を限りに、どうかコロリをしずめて下さい。私の命も差し上げます。このままでは村に人が絶えてしまいます。どうか神様、コロリをしずめて下さい」
と何度も何度も拝むのであった。
長い祈りをささげて顔をあげると、目の前に白蛇がいた。白蛇はじっと老婆を見つめていた。白蛇は老婆の目が自分を見つめていると判ると徐々に体を動かした。白蛇は老婆を見つめ、振り返りながら御手洗場(みたらし)へ行き、水を飲むしぐさをし、戻ってはまた同じしぐさを繰り返すのである。
老婆は、生出山の頂に奥の宮があり、傍に池があって神のお使いである白蛇が住んでいるという言い伝えを思い出し、いま眼前に見るこの白蛇は神のお使いに違いないと悟り、白蛇のしぐさは「神の水を御手洗場から汲んで息子に飲ませよ」という神の託宣と受け止めた。
早速、御手洗場の水をくんで持ち帰り、孫に与えた。孫は生気を取り戻し、十人中九人は助からぬといわれた死病から解放された。老婆は同じコロリにかかっている人にも、拒まぬ限り神の水を与えたので、多くの人が命をとり止められたのであった。
(注) 今は、脱水症状を防ぐために水が与えられ、リンゲルが補給されるが、当時コレラは、水に起因する病とされ、水を与えることは非常識であった。
内藤恭義(平成3年)「郡内の民話」 なまよみ出版
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生 出 神 社
・ 鎮座地 都留市井倉四五六番地
・ 社地面積 三百七拾八坪
・ 祭 神 建御名方命[タテミナカタノミコト]
八坂刀売命[ヤサカトメノミコト]
・ 例 祭 九月二日、四月二十日 神事用具 子供神輿
・ 由 緒
神社の南方に生出山があり、頂上に滾々と湧き出る水を湛えた、小さな池があった。
白蛇が棲み、時折里に姿を現した。里人は恐れ慎み、山頂に御祠を奉建して、諏訪明神と称え奉る。
建御名方命、八坂刀売命を奉斎したところ白蛇は現れなくなった。
延長七年(九二九年)七月 現在地に社殿を造営し、生出大明神として、奉遷したといわれている。明治五年(一八七二年)五月、村社に列せられ、昭和二年九月(一九二七年)供進指定社として、認可された。
’ 平成七年十二月 吉日
’ 生出神社保存会(境内の由来書より)
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