物語
Old Tale
#1507
摩利支天さんのお怒り
ソース場所:甲斐駒ケ岳 魔利支天
●ソース元 :・ 山梨県連合婦人会 編集・発行(平成元年)「ふるさとやまなしの民話」
●画像撮影 : 201年月日
●データ公開 : 2018年06月07日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他 : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。
[概要] 駒ヶ岳山頂から400m程南東に摩利支天と呼ばれる巨大な岩峰がある。摩利支天峰は駒ケ岳だけでなく、山岳信仰の対象となった山に祀られていることが多い。摩利支天は、仏教を守護する陽炎の神で、霊験顕著な守護神と信仰されている。 昔、ある強力が登山客を案内し駒ケ岳に登り、下山途中、摩利支天の所まで来ると「忘れ物をしたから先に行ってくれ」と言っては、摩利支天峰に祀られている摩利支天像を削り取ってきていました。この削り取ってきた物を病人に飲ますと霊験あらたかと信じられていたので、案内のついでに削り取っては高い値段をつけて、売りつけていたのです。その日は登り納めの時期だったので、足の一本ももぎ取って帰ろうと企んでいましたが、ついに天罰を受け、強力は亡くなってしまったと云う。
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今から百数十年前、ある強力が五人の登山客を案内して、駒ヶ岳に登りまました。無事に頂上に登ってから下山する途中、強力は摩利支天が祀られているところまでくると「ちょっと忘れ物をしたから、先に下山していってくれ。」 と客にいい残して、引き返して行きました。客たちは日が暮れないうちにと、下山しました。
一方、強力の忘れ物とは摩利支天のご尊体が銅で作られていましたので昔からそのご尊体を削り取り、病人に飲ませるとたちまちに回復すると言い伝えられていましたので、欲ばりの強力は登山客を案内するたびにそれを削り取って来ては、病気で苦しむ人々に高いお金で売りつけていたので、それを取りに行こうとしたのでした。
もう秋も近いのでこれが最後になるだろうと思い、強力は「ひとつ片足でももぎ取って、これを秘薬として売ればよい正月がおくれるぞ。」 とひとりつぶやきながら摩利支天に近づき「どれ仕事にかかるか。」 と道具を出して足の根元から切り始めました。と、その時、突然「ばか者め!。」と山全体をも震わすような大声とともに、その足が突然ドシンと大きく開いたので、強力は気を失って倒れてしまいそのうえ、谷底めがけてけおとされてしまい、今の登山口の笹の平の馬留の石の上に、はいつくばって死んでしまいました。
「天罰てきめん」とは、このことだと、今でも広く言い伝えられていますが、摩利支天のご尊体にも当時の傷跡というのが残っています。 (白州町)
山梨県連合婦人会 編集・発行(平成元年)「ふるさとやまなしの民話」
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