物語
Old Tale
#1510
龍厳渕の伝説(丹波山村所畑に伝わるお話 舞台の龍厳淵は奥多摩湖に沈んでいる)
ソース場所:丹波山村所畑
●ソース元 :・ 山梨県連合婦人会 編集・発行(平成元年)「ふるさとやまなしの民話」
●画像撮影 : 201年月日
●データ公開 : 2018年06月13日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他 : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。
[概要] 丹波川を下流に向かい、県境になる辺り、昔は、竜厳淵という深い淵がありました。この近くに美しい娘のいる家がありました。ある夜、一人の若い男が現れ、毎夜、彼女を嫁に欲しいと請うのですが、近くにそのような男が住んでいるという話も聞かないので、どのような素性の男か分からないので、両親は返事をためらい、ある時、その男の帰りをつけてみました。すると男は途中、蛇になって淵の中へ消えていきました。蛇の嫁にやるわけにはいかないと、両親は娘をよそに出しましたが、間もなく病気になり死んでしまいました。両親は娘の墓の横に椿の木を植え、弔いました。ある朝、娘の墓の側に植えた椿の木に一匹の蛇が巻き付いたまま死んでいました。
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龍厳渕の伝説
丹波山村所畑に竜厳渕といって昼間でも薄暗く、大きな岩の下で流れが渦を巻いて、恐いようなところがありました。 その渕の上に、一軒の家がありました。その家に、ひめという名の美しい娘がいました。ある夜、若い男が現れて、娘を嫁にほしいといいそれから毎夜来ては、両親にたのむのでした。 しかし、ついぞこの近くで見かけない男なので両親は返事をためらっていました。すると男はそのたびさみしそうに帰るのでした。一体あの男はどこからくるのだろうと、ある夜家の人が後をつけて見るとおどろいたことに男は蛇となって、坂をすべるようにして、渕の中に消えてしまいました。しかも翌朝になって見ると、麦の畑と草むらに一筋の線が画かれていました。 家の人はこれは大変なことになるかもしれないと、ひそかに娘をよそに出しましたが、その娘はまもなく病気になり、とうとう死んでしまいました。 両親は泣く泣く娘のために墓をたて、墓の側に椿の木を植えてねんごろに弔いました。 ある朝のことです。両親が墓へいってみると一匹の蛇が椿の木に巻きついたまま死んでいました。両親はその蛇があの時の蛇だったのかと知り、これほどまでに娘を慕っていたことを哀れに思い、ひめの墓の横に手厚く葬ってやりました。 時が流れて椿の木も大きくなり、真紅の花をつけるようになり、渦巻く渕の流れに花びらを落とすまでになって花は毎年咲き続けました。 今では、その竜厳の渕も奥多摩湖の湖底に沈み、水面に山影を落として湖面にはさざ波がゆれています。 (丹波山村)
山梨県連合婦人会 編集・発行(平成元年)「ふるさとやまなしの民話」
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