物語
Old Tale
#0571
ごうぞの飛び落し
ソース場所:南都留郡富士河口湖町勝山3951 富士御室浅間神社の辺りに伝わるお話
●ソース元 :・ 山梨県連合婦人会 編集・発行(平成元年)「ふるさとやまなしの民話」
●画像撮影 : 2015年11月04日
●データ公開 : 2016年06月24日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他 : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。
[概 要] モモンガとムササビ。共にリスの仲間で、マントの様な滑空に使える被膜を持った生物です。そして、両者は同じ生物のように混同されて語られる事も多いのですが、サイズも姿も全く違っているので、良かったら動物図鑑などで確認してみるのも良いかと思います。 ムササビは比較的標高の低い広葉樹林に、モモンガはもう少し標高が高いか寒い針葉樹林を好んでいます。滑空する時のサイズは、モモンガがハンカチ程。ムササビは意外に大きく30-50cm程、座布団が飛んでいる程の大きさと云います。また、モモンガの種類は世界中に分布していますが、ムササビは日本固有の種で、北海道と沖縄を除く全都府県に生息していたが、その毛皮が良質だったこと、また筆の材としても有用だったので乱獲が進み、現在は「非狩猟鳥獣」とされている。 モモンガ、ムササビ共に空を飛べると云っても、高く舞い上がるわけではなく、高い木に登り、そこから別の木に向かって滑空するという性質から、稀には人の歩む前を横切ったりすることもあったのでしょう、「モモンガー」とか「野襖」とか、暗闇の中で急に顔にかぶさり視界を奪う妖怪のような扱いをされてもいる。 ここでは、生意気でずるがしこい狐を、モモンガに協力してもらい、森の獣たちが一泡吹かせようと諮ったというお話を紹介します。
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ごうぞの飛び落し
昔、富士御室浅間神社の河口にある毛石山には、いろんな獣がいました。あるとき一匹の獣がひとつ騙しあい力の較べっこをしてみようといい出しました。
これを聞いた、タヌキはわしはキツネのようにずる賢くないので困ったなあと頭を抱えて、穴の中にもぐり込んでしまいました。それを知ったキツネは得意満面となって外のけものをだまして、一匹天下を取ってやろうときめこみました。これには、外のけものたちも困って、どうしてもタヌキに勝って貰わなくてはと、タヌキを励ましました。こうなるといよいよタヌキは穴の中に深くもぐり込んで外へ出てこなくなりました。
弱りこんだけものたちはいろいろと考え、またまたタヌキに知恵をつけてキツネに挑戦するようにしました。作戦は月夜の晩に毛石山から里宮の森まで空を飛ぶことで力較べをすることでした。タヌキは「おれが先に飛ぶぞ」といって大きな木によじ登り「一、二のほい。」 とモモンガー(ムササビ)に化けて月夜の空をスーと見事に飛んで里宮の森にきえました。
隣の木に登ってこれを見ていたキツネは「一つおれも」とモモンガーに化けて「一、二の三」と空に飛びました。なんせ初めて空を飛ぶキツネでしたから途中でひっくり返り、水の中にドボーンと落ちてしましました。それを見ていたけものたちは手を叩いて喜び、腹を抱えて大笑いをしました。
実をいうと最初空を飛んだのはタヌキが化けたモモンガーではなくて、本物モモンガーでしたから飛べるのは当然でした。このことを知ったキツネは、騙されたことを知り、間が悪くなってその後どっかへ行ってしまいました。
これからこのあたりを「ごうぞの飛び落とし」というようになり、夜通るとモモンガーが顔に張り付くので、一人では通ることはしなかったといい、明治の終りに大道ができるころまで、モモンガーが空を飛んだといいます。
※文中「ごうぞの飛び落とし」の「ごうぞ」とは、一丁目一番地のことです。
(勝山村)
山梨県連合婦人会 編集・発行(平成元年)「ふるさとやまなしの民話」
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