物語
Old Tale
#1210
鬼の杖石と立石
ソース場所:大月市笹子町白野1038 「立石」 (35.601962, 138.849135)
●ソース元 :・ 内藤恭義(平成3年)「郡内の民話」 なまよみ出版
・ 場所などについては石井工業㈱様に教えていただきました。
●画像撮影 : 2017年06月10日
●データ公開 : 2017年06月13日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他 : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。
[概要] 昔、大月の岩殿山や九鬼山などには大鬼が棲んでいた。お互い力自慢をしているうちに、岩殿山の赤鬼が持っていた二本の石の杖を高く投げ上げて、どっちが力が有るかと勝負になった。なかなか勝負がつかなくて、今度はどちらがより深く地面に杖を突きさせるか勝負しようと、先ず岩殿山の赤鬼が杖をずぶりと地面に突き立てた。杖は地中深く突き刺さった。そのすきに九鬼山の青鬼がもう一本の石杖を笹子峠の方に投げつけた。怒った赤鬼が地面に刺した杖を抜いて青鬼をぶってやろうとしたけれど、深く差しすぎて抜けなかった。とさ。
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鬼の杖石と立石
むかし、大月市の岩殿山に赤鬼がすんでいた。赤鬼はものすごく大きくて、力持ちで、いつも両手に石の杖を持っていた。
桂川をへだてた向かい側に、菊花山という山があり、その裏に九鬼山があるが、そこには仲間の青鬼がすんでいるので、遊びに行くときには石の杖を菊花山に立てて、棒高跳びのようにして、いっぺんに九鬼山まで行ってしまった。
ある日、九鬼山から青鬼が遊びにやってきた。鬼の話というのは、きまって人を喰う話か力自慢の話である。その日も力自慢の話になった。
岩殿の赤鬼は「おれの持っているこの石杖を天高くどこまで投げられるかやってみよう」と、持ちかけた。「よしやってみよう」ということで、力比べが始まった。天高く投げ合ったため、落ちる響きは雷のごとく、その震動は地震のようであった。
力自慢するだけあって、勝負はなかなかつかなかった。勝負をつけようにも空へあげるので、高さを測ることができなかった。お互いに「おれの方が高かった」と、けんかになった。そこで今度は、石杖を地中にどこまで深く突きさせれるか比べることにした。
岩殿山の赤鬼は右手の石杖を横に置くと、左手に持っていた細い方の杖を両手でむんずと掴み揮身の力をこめて地中に突きさした。すると、石杖は手元までズブりと堅い岩山を突きやぷってささった。そのすきに九鬼山の青鬼は、岩殿の鬼の右の石杖を高く持ち上げ、西の方笹子峠に向けて投げてしまった。
岩殿の赤鬼はおこって、左の杖を地中から抜こうとしたが、あまりに深くさしたため、抜くことができなかった。双方素手でとっくみ合いの死闘となり、揚げ句の果てに双方死んでしまった。
いま大月市の石動団地のある岩殿山から一キロばかり東の石動というところに地中深く突きささった石があるが、これが赤鬼の左杖で、引き抜こうとしたときの力でへこんだ指のあとが、はっきりと残っている。右の杖は笹子町の立野の原、JR中央線の線路脇にあって「立石」と呼ばれている。
内藤恭義(平成3年)「郡内の民話」 なまよみ出版
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「立石」の場所について
甲府方面から、国道20号線大月市笹子町白野を行くと富士急行の路線バス バス停「原入口」のある角に来る(石井工業㈱様が目印)。この角を北に入り中央線のガードをくぐり中央線の北側角に「立石坂の立石」の案内があるが、ここを見回しても、線路際を眺めても見当たらない。実はお仕事中の石井工業さんを煩わせてしまったのだが、立石は中央線の南側にある。国道20号線をほんのわずか戻り、石井工業㈱さんの西側に階段状になっている入口がある、これを上ると供養塔や観音像が建立されているが、観音像の前を左手に折れ、踏み跡が無くなったあたりで線路際を仰げばそこに立石がある。上から見ると中央線の信号機の少し笹子駅寄りの辺り。丁度ボックスのかげになっている。
旧笹子町を行くと、色々な伝説の現場がわかりやすく表示されている。と同時に附近の方々が説明板以上のことをご存知だったりする。お話の現場を尋ね歩くと、ほんの数十メートル先の場所でも「どこかなあ?聞いたことないなあ」と言う事も少なくない。この辺りでは「笹子追分人形」保存会が地元のお話を小学生に演じて見せるなど、地域内の伝承を大切にしている様子がうかがえる。
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山梨各地に伝わる昔話や伝説、言い伝えを収録しています。昔話等の舞台となった地域や場所、物品が特定できたものは取材によって現在の状態を撮影し、その画像も紹介しています。