物語
Old Tale
#0333
諏訪社の妖怪譚
ソース場所:北杜市長坂町中丸1440 諏訪大神社
●ソース元 :・ 長坂町教育委員会(平成12年)「長坂のむかし話」 長坂町役場
●画像撮影 : 2015年12月10日
●データ公開 : 2016年06月24日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他 : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。
[概 要] 北杜市長坂町中丸の諏訪大神社の辺りは、中丸の里の外れに位置する。今は、神社の裏手にも耕作地が広がっているが、大深沢川に沿う林がもっと神社に迫っていた頃は、神社裏手は日中でもさみしい場所でした。神社裏の大木には妖怪が棲んでいて、夜にそこを通るといたずらをしてくると云われていました。
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諏訪社の妖怪譚 (柿平)
むかし、柿木平の主要な里道といえば深沢の旧道を上りつめ喜平田(きへいだ)あたりで右に折れ諏訪大神社東裏に出て、それから小尾平たんぼを右に、現在の和手山貯水池の下に抜ける筋である。「あずきそぎ」は、この道路脇にある神社付近のアマンドウの大木、「天つるし」は神社境内の巨木に住んだ妖怪の話である。
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あずきそぎぱんぱあ
神社裏に沿った石垣の上には、むかし、アマンドウの大木があって、このあたりは日中でも通行人をさみしがらせたところだったという。
このアマンドウの大木には、あずきそぎぱんぱあという妖怪が住んでいた。そして、夜になると毎晩のように樹上でザアザアという音を立て、しわがれた声で
「あずきをおあんなすって、あずきをおあんなすって」と言つては、通行人を呼び止める。
もし、その声を聞いてうろたえるものがあると、妖怪は持っている大ざるにいれてアッという間にすくい上げてしまうという。
けれども、この妖怪の正体を見たものは一人もいないというのである。こうした話から、諏訪大神社の裏を通る道は、少年たちにとって、夏の夜の格好な「肝試しコース」として長く人気を集める場所となったのである。
(小尾達朗・『口碑伝説集』)
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足もとコ口リン天つるし
むかし、諏訪大神社の境内にモミの大木があった。
暗い夜更けにこのモミの木の下を通ると必ず足もとにパッと怪しい光がする。その時、もし驚いて倒れる人があるとたちまち木の上から巨大な怪物がおりてきて吊るし上げてしまう。
しかし、だれひとりとしてこの妖怪の正体を突きとめてみようという者もなく、付近は夜間の通行人も途絶えてただただ恐ろしい場所と言い伝えられていた。
足もとでピカッと光る怪光、どぎもを抜かれてコロリと倒れる人、さっそくつるし上げにかかる巨大な妖怪。そこでだれ言うともなく「足もとコロリン天つるし」と言ったのであろう。
その後諏訪社が火災にあって焼失した折、妖怪が住んでいたというこのモミの大木は社殿再建の用材として使われたが、この木一本だけで社殿全部を作り替えることが出来たということである。
火災による再建から、長い年月を重ねてすっかり老朽化した諏訪社は、平成11年に氏子の手によって改築工事がおこなわれ、神社の境内も手入れがされて明るくなった。
妖怪たちにとっての居心地のよい場所がまた一つ減ってしまった。
(小尾達朗・『口碑伝説集』)
長坂町教育委員会(平成12年)「長坂のむかし話」 長坂町役場
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アマンドウ 柿の原種と言われている品種。豆柿などの別名がある。親指の先ほどの小さな柿で、樹上で熟し、黒くしわしわになると甘くなる。若実は柿渋を取るために使われる。
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