物語
Old Tale
#1175
鉄砲名人吉兵衛
ソース場所:富士吉田市新倉585 正福寺
●ソース元 :・ 山梨県連合婦人会 編集・発行(平成元年)「ふるさとやまなしの民話」
●画像撮影 : 201年月日
●データ公開 : 2017年01月05日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他 : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。
[概要] 昔、吉兵衛と馬之丞と云う二人の鉄砲名人がいた。二人は共に他に比べる者もいないような腕前だったと云う。今でもその二人の墓が正福寺には並んで残っていると伝わる。
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鉄砲名人吉兵衛
新倉というところに吉兵衛という名の鉄砲名人がいました。新倉三山のひとつに数えられている正福寺には、その人の墓が仲間の馬之丞の墓と並んで残っています。
ある時、御殿場のほうでで鉄砲の会があって、吉兵衛は馬之丞とニ人で出かけていきました。すると地元の人たちは、
「郡内からお天狗(腕のいいことをしきりに自慢する者)が来たから会に出るのを止そう」と言って、退いてしまいました。 そうなると鉄砲の会は二人の撃ち合いになりました。最初、馬之丞は「的はいらねえ、この輸の中を弾が通るよう撃ってみろ」と言って、親指と人差指を輪にして距離をおいて立ちました。
吉兵衛はそれを目がけてドンと一発見事に弾は指の間を通りぬけました。つぎは馬之丞の番、これも成功しました。
二人はこうして何度も競い合いました。けれども同じことばかりじゃ面白くないと別の的を二人いっぺんに、一、二、三で撃つことにしました.すると途中で弾がぶつかり合って、弾は空へ飛び上がったということです。
また、ある時、代官が吉兵衛に「お前は鉄砲の名人だそうだが、わしの見ている前その腕を見せてみろ」と言いました。
待ってましたとばかり吉兵衛は、ちょうど上空を飛んでいだトビを目がけて鉄砲をかまえ「代官機、右の目を撃ちましょうか、それとも左の目にしましょうか」と言つて代官の望む通り撃ち落としたということです。これを見た代官は「なるほど噂どおりの鉄砲の名人だ」としきりに感心したそうです。
鉄砲名人の吉兵衛が、その後夜撃ちをするため三ツ峠へ行ったときのこと、どこからか「それ、吉兵衛をひねり殺せ」、「いやいや正福寺の阿弥陀様が見ているから、よせよせ」
というふしぎな声が聞こえてきました。吉兵衛は、もしかすると聞き違いかも知れぬと思いましたが、次の日も、また次の日も声を聞いたものですから、さすがの吉兵衛も恐ろしくなって、「俺は今日限り鉄砲をやめよう」とけっしんして、たいせつな鉄砲を正福寺に預けてしまいました。
正福寺には、今でもその時の鉄砲が伝わっていると言います。
山梨県連合婦人会 編集・発行(平成元年)「ふるさとやまなしの民話」
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