物語
Old Tale
#1227
マムシの銀右衛門(上野原市 上野原新町)
ソース場所:上野原市上野原 新町
●ソース元 :・ 山梨県連合婦人会 編集・発行(平成元年)「ふるさとやまなしの民話」
●画像撮影 : 201年月日
●データ公開 : 2017年10月16日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他 : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。
[概要] 上野原には代々マムシの毒除けで高名な「蝮の銀右衛門」と云う家筋がある。その初代は豪胆な人で、仙人が大入道に化けて彼の度量を計っても動じる様子が無いので、ついには仙人からマムシの毒を消す秘法を授けられたと云う。そして、現在においても当代の当主によって蝮の毒除けの護符づくりは継がれている。
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マムシの銀右衛門
昔、上野原の新町に里吉銀右衛門というお百姓がすんでいました。
大変しっかりした気性の人で、家業の農業に精を出し、評判の働き者でした。毎年夏になると、銀右衛門はまだ暗いうちに家を出て、後山にある稲田の水を見に行きました。
ある朝のことです。まだ穂の暗い谷間道を歩いているときのことです。突然、銀右衛門の目の前に身の丈三メートル以上もあろうかと思われる大入道が立ち現れて、銀右衛門は一瞬ぎくりとしましたが、さすが気丈な人だけあって、すぐにこの大入道をにらみ据え、ゆうゆうと稲田の見回りを済ませて家へ帰ってきました。
次の朝もまた、この大入道に出会いましたが、銀右衛門は一向に恐れる様子を見せませんでした.このようなことが幾度かありましたが銀右衛門が少しも驚かないので、そのうち大入道も出なくなりました。
そののちしばらくして今度は白髪を襟のあたりまで垂れてあごひげを長く伸ばした仙人が銀右衛門の前に立ち現れて「お前は、世の中に何もこわいものがないのか。」 、と尋ねました。すると銀右衛門は「私は毎朝山道を歩いて来るがいつなんどきマムシにかまれるかと思うとそれだけがこわい。」 と答えると、仙人は笑いながら「では、マムシの毒を消す法をお前に授けよう」といって、その秘法をていねいに教えてくれました。
銀右衛門がある日マムシにかまれたとき仙人の教えてくれた秘法を用いてみると、不思議にすばらしい効果が現れてこのことはたちまち評判になりました。噂を聞いた近在の人たちはもとより、はるばる遠方から多くの人がやって来て、銀右衛門の秘法で治療を受けたといいます。
この秘法は今でも里吉の秘法となっているといいます。 (上野原町)
山梨県連合婦人会 編集・発行(平成元年)「ふるさとやまなしの民話」
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関東地方では特に甲州街道筋に、「蛇に咬まれた際の療法をもつ家筋」や「蛇よけの技術を持つ家筋」または「その両方の技術を持つ家筋」が沢山あった。その中でも、上野原の「まむしの銀右衛門」は高名であった。そして今でも「まむしの銀右衛門」18代当主である里吉利行氏が、まむしの毒よけの護符づくりを継いでいる。
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