物語
Old Tale
#1503
端午の節句に幟、鯉幟をたてない村
ソース場所:笛吹市春日居町徳條
●ソース元 :・ 山梨県連合婦人会 編集・発行(平成元年)「ふるさとやまなしの民話」
●画像撮影 : 201年月日
●データ公開 : 2018年05月07日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他 : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。
[概要] 笛吹市春日居町徳條では、端午の節句に幟や、こいのぼりをたてなかった。それは、昔、この土地の農民と、通りかかった僧の諍いを原因としていた。些細な不注意から二人は諍いとなり、ついには農民が僧の首を刎ねてしまうという大事件になった。その日が、端午の節句の日で、村には多くの幟やこいのぼりがはためいていましたが、この大惨事に幟やこいのぼりを下ろして家に閉じこもり忌み事を自らの家に入れないようにしました。それから後は、この村では端午の節句でも幟、鯉幟などを一切立てないようになったといいます。その代わり男の子が生まれると嫁さんの実家から座敷幟が贈られるようになり、それを家の中に飾るようになりました。 そんな昔話はだんだん忘れられて行きますが、座敷幟の習慣は残っているようです。
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端午の節句に幟、鯉幟をたてない村
昔むかし徳條村(現在の春日居町徳條)は徳分があり、村人はよく働いて裕福な、のどかな村でした。
この平穏な村に、ちょっとしたことから大きな事件がおきました。
それは五月五日の端午の節句の日でした。青く澄んだ大空には織や、鯉幟が勢いよくハタハタと音をたてて、付近一帯は青葉若葉の最も気分のよい季節でした。
農家の人たちは田植前の苗代づくりのため、田に水を引き入れて「あぜ」塗りをしていました。
ちょうどその時傍らの道をお坊さんが通りかかりました。お百姓さんが鍬を打ちおろしたとき、お坊さんの衣を泥だらけに汚してしまいました。
最初お坊さんとお百姓さんはいい争いをしていましたが、そのうち、とっくみあいの喧嘩になりました。そうなると体の小さいお百姓さんはお坊さんに組み伏せられて、いくつもこずかれてしまいました。
剣道では少しばかり習ったことのあるお百姓さんは腹の虫が納まらず、近くにある自分の家に飛び帰って先祖から伝わっている備前(今の岡山県)の国、長船村の刀鍛冶の作った正宗の刀を持ち出してきて、衣の泥を落としていたお坊さんのところへやってきて、その刀を振り回しました。
お坊さんはびっくりし、あわてて逃げ出しましたが、お百姓さんは追いかけてきて、うしろからお坊さんの首をめがけて切りつけました。たしかな手応えがあったはずなのに首は落ちません。平等川を渡って裏田圃に出て、必死で逃げていったお坊さんが溝をまたいだ瞬間、首(頭)がコロリと前に落ちて、お坊さんもその場に倒れてしまいました。
剣道の腕はたしかなお百姓さんが名刀で切ったものですから、すぐには首が落ちなかったわけです。
この事件はすぐに村中に知れ渡って、普段静かな村は大さわぎとなり、どこの家でもそうそうに幟や鯉幟をおろして、村人は家の中に閉じ篭ってしまいました。
それから後は、この村では端午の節句でも幟、鯉幟などを一切立てないようになったといいます。その代わり男の子が生まれると嫁さんの実家から座敷幟が贈られるようになり、それを家の中に飾るようになりました。それが現在も続いています。
なお、お坊さんの首が落ちて倒れたところには、無縫塔という頭の丸い墓石が立てられていて、村人たちは長い間供養を続け、今でもそれは続いています。(春日居町)
山梨県連合婦人会 編集・発行(平成元年)「ふるさとやまなしの民話」
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