物語
Old Tale
#0594
鬼石(生出神社「鬼石」)
ソース場所:都留市井倉456 生出神社
●ソース元 :・ 内藤恭義(平成3年)「郡内の民話」 なまよみ出版
●画像撮影 : 2015年07月13日
●データ公開 : 2016年06月24日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他 : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。
[概 要] 昔、都留市井倉の九鬼山から桜井峠近くの森に大きな赤鬼が棲みついて、白昼堂々悪さをするようなありさまで、村人たちは困り果てていた。ついには神頼みしかなくなり、諏訪明神(建御名方神)にすがり真剣に祈った。神主が祝詞を奏上していると祝詞の文字が次々と変わっていき神主に怪力が備わった。その言葉の通り、村人たちはそれぞれがかまどに使われている鎖を持ち寄り長い大鎖を造った。あまりに長く重いので村人は三人がかりで神社の庭に引きずるのがやっとだった。赤鬼は、それを山の上から眺めて人間の非力さを笑っていた。その鎖が欲しくなった赤鬼が神社にやって来ると、怪力を得た神主が赤鬼に鎖を投げつけぐるぐる巻きに縛り、軽々と森の方へ投げ飛ばした。すると赤鬼はそのまま両手をついて頭を下げたかっこうの大きな赤い石となってしまったと云う。
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鬼石
昔、井倉(都留市)の九鬼山から秋山村の桜井峠の近くの森に大きな赤鬼がやって来て住みついていた。その頃は強瀬(大月市)の岩殿山や九鬼山にはたくさんの鬼が住んでいたが、この鬼たちに仲間はずれにされたくらいだから鬼の中でも大層たちの悪いやつであった。悪さも人間様に見つからないようにやるのではなく、まっ昼間でも堂々と、村人がせっかく育てた作物や柿や栗を奪いとるのはあたりまえ、家の中にかくれると家をゆすって女子供が外に飛び出るところをつかまえて連れ去るというありさまであった。
桜井の人達もあまりの乱暴さにたまりかね、何とかして遠くへ追い払うかやっつけてやろうと、いろいろと知恵をしぼったが、知恵は人間並み、力は及びもつかないほど強いやつとあっては、うまい方法がみつからず、とうとう神様にお願いすることとなった。
農耕の神さまだというお諏訪さまに集まり「南無諏訪大明神さま、大明神さまに神の威徳があるならば神の威徳をもって我らに力をかし、悪魔を退散せしめ給え」とほんとうに真剣に祈った。するとどうであろう、神主が祝詞を奏上していると祝詞の文字が次々と変っていくのであった。
「日頃の信仰心に応えて神の身がわりとしてお前に私の力を与えよう。式が終ったら境内の御手洗石を持ち上げてみよ、また松の木にからんでいる藤づるを手刀で切ってみよ。われにカがそなわったと知ったら、くさりを集めて鬼にたち向ってみよ」と書かれたのであった。
早速ためしてみると、何と十人でも持ち上らぬ大石が軽々と持ち上げられ、太い藤ずるが鉈で切ったように手刀で切れたので、村人もびっくりぎようてんした。
神主は自分に神の力が宿ったことを知ると勇猛心が湧いてきて、「村人よ私が鬼を退治してみせるからみんな家からおかぎさんの鎖を持って来い。」と命令した。
たちまち村中からかまどの鍵に使われている鎖が集まった。鎖と鎖がつなげられて長い鎖ができたが大変重いものになった。神社の庭まで三人がかりで引きずりながら運ぶのがようやっとであった。鬼はこの様子を山の上から眺め、「力のないやつらだ」と腹を抱えて笑っていたが、みんなが大事に運んでいる長い鉄のひもをなわとびに使いたくなって神社にやって来ると、「その鉄のひもをよこせ」と言った。
「これは正しく神の引き合せ」とばかり神主は手にしたばかりのくさりを握って「それ、くれてやるぞ受けとってみろ」とぷるんぷるんと振り回して鬼をめがけて投げ付けると、鎖は鬼の体に巻きついた。「しめた!」とばかり神主がひょいっとひっぱると鬼はあっけなくころんだのでぐるぐるまきにしばり、両手でもち上げ軽々と森の方へ投げ飛ばした。
すると赤鬼はそのまま両手をついて頭を下げたかっこうの大きな赤い石となってしまった。以来村人はこのあたりを赤鬼高地と呼ぶようになった。
内藤恭義(平成3年)「郡内の民話」 なまよみ出版
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