物語
Old Tale
#1179
田植仕事を手伝ってくれたお地蔵さん
ソース場所:山梨市牧丘町倉科上野田 岩舟地蔵
●ソース元 :・ 山梨県連合婦人会 編集・発行(平成元年)「ふるさとやまなしの民話」
●画像撮影 : 201年月日
●データ公開 : 2017年01月05日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他 : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。
[概要] 山梨市牧丘町倉科上野田のお地蔵さんは、公民館前で今も地域の人達の安全を見守っている。 その昔、耕運機など無く、馬や牛を使って田畑を耕していた頃の事です。 農耕は天候次第ですから、前もって準備はしているのですが、急に作業を進めなくてはならない時もあります。 お互い近所同士手伝いながら作業を進めるのですが、一人の農夫は、どうしても馬の鼻取りをしてくれる人の都合がつきませんでした。早く進めなくては苗を植え付けるタイミングを逸してしまうので困っていました。 すると、どこからともなく一人の子供がやって来て鼻取りをしてくれました。 泥だらけになりながら、子供が鼻取りをしてくれたので、どうにか作業が間に合いました。 農夫は本当に感謝して、夕食を一緒に食べないかと誘いましたが、子供は構わないよとどこかへ行ってしまいました。 帰り道、上野田の岩船地蔵さんに挨拶しようとして来たら、さっきの子供のように腰まで泥だらけになったお地蔵さんが立っていました。 農夫が困っているのを知ってお地蔵さんが助けてくれたと、何度も何度も感謝しました。
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田植え仕事を手伝ってくれた お地蔵さん
それは、それは、真夏をおもわせるような暑い六月のことです。
牧丘町の上野田集落は、昔は倉科村の下組の中にありました。六月ごろの農作業は春の養蚕の上蔟(じょうそく)、麦の取り入れ、そして田植と一年中で一番忙しい日が続きます。農家ではこの時期を「農」といいます。田植をするのには、まず最初に畦ををぬり、たんぼ一面に水をはり、すっきんどう(牛馬で水田を耕すこと)をして苗を植付けます。
六月も末近い日のことです。農夫がすっきんどうをするために鼻取り(馬の口取り)をする人をさがしていましたが、忙しいときなのでなかなかみつからず、困っていました。
そのとき、どこからともなく一人の子どもが現れて、「おっちゃん、おれがはなどりをしてやるよ。」といって馬の手綱をとり「そうれ、まわれ、すっきんどう」と声をかけながら、泥だらけになって働いてくれました。
やがて仕事が終り農夫は大変よろこんで、「おかげで大仕事ができやした。」 と子どもに礼をのべ、家族と一しょに夕食をするようにすすめましたが、子どもは「おっちゃん、おれのことはいいよ。」 といって名前も告げずにどこかへ行ってしまいました。農夫は不思議な子どもだと思いながら付近をさがしましたが、ついにその姿はみつかりません。仕方がなく道端の岩舟地蔵さんに尋ねてみようと思い、そこへ行ってみますと、なんとこのお地蔵さんは腰まで泥だらけになって立っていて、そのそばには泥水の足跡さえついていました。農夫はこれを見て、人手のないのを知ってお地蔵さんが子どもの姿になり、田植仕事を手伝ってくれたことを知りました。農夫はお地蔵さんに手を合せて何度もお礼をいいました。
それ以来このお地蔵さんは、農業の守り地蔵さんとして村人たちに親しまれ、夏になると麦わら帽子をかぶせてもらったり、車の往来の激しい今では、へルメットをかぶせてもらっていつもにこにこ顔で立っています。(牧丘町)
山梨県連合婦人会 編集・発行(平成元年)「ふるさとやまなしの民話」
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