物語
Old Tale
#1548
洗濯池
ソース場所:白根館 早川町奈良田344
●ソース元 :・ 「早川のいいつたえ」第二集 著者:三井啓心 出版社:㈱上田印刷
●画像撮影 : 年月日
●データ公開 : 2020年08月21日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他 : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。
【概要】 山深い奈良田への道の手前には「慶雲館」という世界最古の宿がある。藤原鎌足の子、真人が飛鳥時代の慶雲二年(705年)に開湯したと伝わる。慶雲館のようにギネスには記載されないけれど、奈良田も温泉の歴史と入湯した有名人についての言い伝えでは負けていない!なにせ奈良時代の孝謙天皇にまつわる話が伝わっているのだから。奈良田の温泉についての言い伝えを紹介する。
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奈良田のいいつたえ
『洗濯池』
大昔のえらい人というのは、神通力をもっていたり、神様への頼み方がじょうずな人が多く、よく願いを聞いてもらうことができました。
奈良田においでになった、孝謙天皇様もそのおひとりで、神様に洗濯池をつくってもらいました。
天皇のお召物を洗ってから、あとは自由に使うがよい。と村人に払い下げてくれました。
せいぜい畳四枚ぐらいの広さの池でしたが、不思議なことに、年間を通して温度が三十度ぐらいはあり、冬には湯気をあげていました。
汚れたタホ[藤の繊維などでつくった野良着]も、この池で洗えば、わけなく汚れがおちるということで、焼畑仕事で疲れ切った女たちが、家中の洗濯物をかかえてきては、じゃぶじゃぶやりました。
昔の野良仕事や、山仕事をした女たちの手は、お世辞にもやさしい手とはいえず、悪くいえば、掘り出したばかりの根しょうがのようなみじめな手でした。
ところが、いつもこの池ですすぎものができる奈良田の女たちは、はげしい仕事をするわりには、手がきれいで、おまけに肌もきれいでした。
さすが女帝様だけに、同性を大事になさったものとみえます。
さてこの池、今は奈良田湖に沈んでしまいましたが、その池の下めがけて、パイプを打ち込んで、湯を上げたのが、この頃、オープンした白根館で、さして深くもないのに、現在、湯の口から約四十一度の熱湯があふれています。
洗濯池のお湯だけに、じっくりつかると、体とついでに、心もきれいになるとは、白根館の若主人のお話でしたが、そういえば、前をぞろぞろ通った湯上りの御婦人たちが、気のせいか美人に見えました。
(「早川のいいつたえ」第二集 著者:三井啓心 出版社:㈱上田印刷 より)
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