物語
Old Tale
#1581
国福大神社(富士吉田市下吉田6744)
ソース場所:国福大神社 富士吉田市下吉田6744
●ソース元 :・ 山梨県神社庁hp 参照
●画像撮影 : 年月日
●データ公開 : 2021年05月10日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他 : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。
【概要】ずーっと昔の事ではありません。地中をメトロが行き、傍らの道を自動車が走り、空には飛行機が飛び、おしゃれなお姉さんがハイヒールで街中を闊歩していた時代。富士吉田でチフスが蔓延していました。一人感染者が見つかると、周囲にも感染が広がっていきました。命を落とす人も大勢出てきます。患者を隔離したり、手をよく洗ったり、考え付く限りの手を打っても、なかなか病は終息しません。そんな中、一人の拝み屋が「区内の倉にしまい忘れられたお面が外に出たがっている」と言い、國福大神社を創祀し、そのお面を祀ったところ、チフス患者はすっかり平癒したという。
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国福大神社
◆由緒沿革 : 昭和十一年十一月二十六日に設立。昭和十年前後、富士吉田で毎年チフスが蔓延し、患者の一人が笛を吹き、太鼓をたたく格好をするので、下吉田宮下町の拝み屋 佐久間きよ氏にお伺いを立てたところ、「区内の倉にしまわれたままのお面が世に出たい」と云っているとのお告げがあり、そこでそのお面を祀り『国福大神社』を創祀。その後チフス患者はすっかり平癒した。そのような由緒からこの社は『お面さま』とも称されている。
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「チフス」と一言で云いますが、これは高熱や発疹を伴う細菌による感染症です。しかし、この細菌は一つではなくざっと ①チフス菌による腸チフス ②パラチフス菌によるパラチフス ③発疹チフスリケッチアによる発疹チフス の三種の細菌感染症の総称です。現在では上下水道の整備により感染が減少し、また抗生物質による治療法が確立してきましたが昭和初期においては、日本でも年間約四万人が発症していたそうです。
ただ、現在においても上下水道が完備されていない発展途上国への海外旅行など海外との行き来により、日本での感染者が増加傾向にあるそうです。渡航歴のない感染経路不明な患者や、無症状病原体保有者からの集団感染などもみられているといいます。
今ほど衛生環境が整っていなかった時代には、努力しても努力しても感染がやまず、神に頼っていったというのは自然な事だったのかもしれません。もちろん神頼みだけでは感染を食い止めることは出来ません。ただ、病の原因や病を根絶するための武器がわからないとき、病に倒れた人や、その家族たちが病を隠したり、他者から八つ当たりのように攻撃をうけたりするのはあってはならないことです。
『「お面さま」が外に出たくて、信心深い住民たちにお告げとして病を降らせた。』のなら、神様からの依り代となった患者たちがむやみに差別される事もなかったでしょう。治療法が確立されるまで「お面さま」は人々の心のささくれをそっと抑えてくれたのではないでしょうか。
COVID-19禍中において、一年後、二年後そしてもっと先の将来が見渡せない恐怖や、いつまで続くかわからない我慢の中、心がへとへとになってしまう事もあるでしょう。でも、必ず心が晴れる日が来るでしょう。それまで心のささくれをそっと抑えていきたいと思ってます。ほんの85年ほど前に創建されたこの小さな神社に色々考えさせられました。
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