
物語
Old Tale
#1555
黄金長者[コガネチョウジャ]
ソース場所:笛吹市八代町北1466
●ソース元 :・ 「読みがたり 山梨のむかし話」 山梨国語教育研究会 編 / 株式会社 日本標準 発行
・ 現地説明板
●画像撮影 : 年月日
●データ公開 : 2020年08月24日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他 : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。
【概要】
笛吹市八代町北の塩田街道と若彦路が交わる辻にお地蔵さんが祀られている。交通の拠点であることから、馬頭観音と並んで祀られている。このお地蔵さんには、財宝伝説と、財宝を失った長者の悲劇を伝えるお話がある。
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黄金長者[コガネチョウジャ]
むかあし、ここいらへんに、ひとが「黄金長者」って言ってとう[言っている]、えれえおでえじんが住まって[住んで]いとうだと[いたんだと]。なかなかの風流もんで、春にゃ花、秋にゃあ月をながめちゃあ[ては]、和歌なんか作って暮らしてとうだ[いた]と。いいおやしきだっとう[だった]から、広い庭にあっとう橋は、「月見橋」って名づけとうを、あとのし[人]まで、「月見橋」、「月見橋」っていっとうだっちゅうよ。ほかにも、「お姫さんの井戸」っちゅうなめえ[名前]の井戸ものこってるだよ。
このおでえじんがなあ、でえぶ年を取ってから、孫子のでえ[代]まで黄金をのこしといてやらず[やろう]と考えとうだと。ほんで、いろいろ考えたあと、金地蔵[キンジゾウ]さんのからだへかくしておくことにしとうだと。金地蔵さんのからだへいっぺい[たくさん]黄金をつめてから、そのおでえじんはどうやってありかを知らせっかと思案しただと。とうとううまいことがうかんで、金地蔵さんの背中へ「富士三里有金」ってほっといとうだと。そりょう[それを]、おやしきにあっとう小塚の上へ、東を向けておいとうだと。この塚は、今でもあって、今は、馬頭さんや、御地蔵さんがまつってあるだよ。
金地蔵さんを置いてっからええかげんたってなあ、この塚のとこを通りかかった六部が、この地蔵さんを見つけて、背中にほった六字のわけ[意味]をといちまっとうさ。ほうして、うまうま金をめっけた六部は、金地蔵さんをおぶって、富士川河原まで来とうだと。そこで黄金をみんなつかみ出して、金地蔵さんをそけへおっぽって[放り出して]、姿あぶっくらまし[姿を隠した]とうだと。
金地蔵さんがとられてっから、そのおでえじんは、じょうぶ[すっかり]落ちぶれちまっとう[落ちぶれてしまった]だと。金地蔵さんがどうなっとうか、土地のもんは、知らなんでいとうが、ええかん[かなり]たって、興津の清見寺にあるっちゅうこんを聞いたこんがあるだよ。
「富士三里有金」っちゅうことのわけかえ。そりゃあなあ、富士山はどこにある?ほうさ南の方にあるら。三里っちゅうは、足のひざがしらの下の外側のくぼんだとこのこんだよ。ふんだから、地蔵さんの南っ側の足のひざのくぼみに金があっとうだよ。わかったけ。
注 * 六部=人々からお金をもらいながら全国をめぐり、寺まいりなどをする人。
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史跡 金地蔵[カナジゾウ]と黄金[コガネ]長者伝説
昔、このあたりに黄金長者と呼ばれる長者が住んでいた。村の人達の面倒見もよく、花鳥風月を楽しむ風流者で、街道にかかる橋の上でいつも月見の宴を催し、月を詠じ歓をつくしたので、この橋を月見橋と呼ぶようになったと『国志古蹟部』に書かれている。
その場所は、塩田街道と若彦路の交わる辻で、中馬や旅人が大勢通る処であった。ある時、長者は旅人の安全を願って辻の小塚上に立派な地蔵を建立、その背中に「不二三里有金」と刻んだ。
像は、旅の厄除け地蔵として旅人のお詣りも多く、長者も「よい事をした」と喜んだ。何年かたったのち、旅の六部(行脚僧)が、像の背中の六文字を不思議に思い「それは右足に金が有ることだ」となぞ解きをして、その金を盗もうと像を背負って夜明けに富士川の河原まで行き、像の右足を壊して、金をとりだして姿を消した。
打ち捨てられた像は、拾われて興津の清見寺に納められたというが、像を失った長者の家は、姫が井戸に身を投げ、自殺するなど不幸が続き、滅びたという。
この悲話を知った村人は、小塚の場所を金地蔵と名付け、石像を建立、馬方衆も馬頭観音像を建立し、供養祭りをした。この祭り、観音祭りとして今も地域の人々を中心に続いている。
・ 昭和六十三年三月三十日
・ 若彦路の里保全活用推進協議会
・ 八代町北 金地蔵保存会 (現地説明板より)
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