物語
Old Tale
#1182
長右衛門とムジナ
ソース場所:笛吹市芦川町鶯宿に伝わるお話
●ソース元 :・ 山梨県連合婦人会 編集・発行(平成元年)「ふるさとやまなしの民話」
●画像撮影 : 201年月日
●データ公開 : 2017年01月05日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他 : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。
[概要] 昔、笛吹市の鶯宿峠にはムジナが住んでいて人を化かしては、村人を困らせていました。ある日、馬方の長右衛門さんが里でムジナの好物の油揚げを馬の背に積んで戻ってくるとき、山道で見慣れぬ小坊主に会った。小坊主は「鶯宿のお寺まで行きたいけど、くたびれたから馬の背に載せてくれないか?」と云う。長右衛門は(こいつはムジナだな)と思いながらも何食わぬ顔で承知し、峠に着くと「この馬は下り坂で走ったりして、振り落とされると危ないから」と小坊主を馬の背にぐるぐる巻きにし、家へ戻ると小坊主のお尻を火であぶりました。小坊主はムジナに戻り「もう悪さはしないから」と云うが、長右衛門は「うまいこと言っても、またやるんだろう!」ともうひとあぶり。ムジナは泣いて許しを請い、超右衛門さんは放してやったと云う。
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長右衛門とムジナ
むかし鶯宿村に長右衛門という馬方のじいさまが居て、毎日馬をひいて鴬宿峠をこえ、里へ炭や薪を運んで暮らしをたてていました。
この峠には昔から古いムジナが住んでいて人を化かし、村びとを困らせていました。 ある日、長右衛門はいつものように里へ行って油あげを積んで帰りの山道に、一間ばかり先に見なれない小坊主がふいに現われ、「おらあ鴬宿のお寺へ行くどうけんど、くたびれたから馬に乗せてくりょう。」 と言いました。長右衛門は「さては、こいつはムジナだな。」と思いましたが、何くわぬふりをして「ああ乗せてやらあ」 と、小坊主を馬の背中に乗せて峠につくと、何を思ったのか「この馬は下りに向けばやたらに走って危ねえ。大事なお客を落しちゃあいけねえ。」と言いながら、いやがる小坊主の体を馬のくらへ固くしばりつけ、たづなをとってどんどん下って行きました。 馬の上の小坊主は「はい、ええ(もう、いい)からおろしてくりょう(くれ)。」と もがいたり あばれたりしましたが、長右衛門は知らぬふりをして馬の尻をたたき、家に着くと急いで馬を土間の中へ追いこみ 中からかぎをかけ、「おばあ、お客をつれて来たから、があとう火をおこせ。」 と大声で言いました。
長右衛門は女房と二人であばれる小坊主の足を持ち尻をジリジリとあぶりました。「アチイ、アチチイ。」 と小坊主は苦しがって、火の上でパタパタとあばれていましたが、たちまち正体を現わし、「実はおらあこの峠のムジナどう。ハイ(もう)悪さあ(わるいことは)しんから ぜひ かんにんしてくりょう。(ください)」と あやまりました。長右衛門は「そんなうまいこと言っとうっても だまされんぞ。」 と、また火の上で尻をやきました。ムジナは「おらあ うそは やあん、(言わない)、ごみしんだ(おねがいだ)」 と 泣き声でたのみましたので長右衛門は「ハイ(もう)悪さあしるじゃあねえぞ。」 と固く約束して外に出してやりました。
その夜から何者かが村中に聞える大声で「長右衛門のケツあぶり!」と、くり思しどなるのが評判になり、ついに長右衛門のあだ名になってしまいました。(芦川村)
山梨県連合婦人会 編集・発行(平成元年)「ふるさとやまなしの民話」
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