0509│八坂神社と竜神

ソース場所:甲州市塩山藤木2353 八坂大神社
●ソース元 :・ 山梨県連合婦人会 編集・発行(平成元年)「ふるさとやまなしの民話」
●画像撮影 : 2015年10月26日
●データ公開 : 2016年06月24日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他 : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。
[概要]
八坂神社と竜神
その年の七月は、いつになく焼け付くような日照りが続き、そのうえ疫病が流行して村人たちは大変難儀をしていました。
田んぼは渇いてひび割れを起こし、畑は風が吹けば土が舞い上がるというありさまで、飲む水も食べるものにも事欠く日が幾日も続きました。
そんなある日のこと、この村にひとりの旅の行者がやってきました。長い修行のせいか白衣は泥にまみれ、長い髭をたらし、背中に笈を背負っているという姿で一夜の宿を求めたのです。
もともと信仰心の厚かったこの村の人たちは、村の中ほどにある荒れ寺の竜海寺に案内し、各人が少しずつ食べ物を持ち寄って行者に差し出しました。
村人の親切を喜んだ行者は「私にはお礼といっても何もできないが、村の人が困っていることがあったら、せめてお祈りだけでもして進ぜよう」と言いました。
村人たちは「行者さまにお礼をしてもらいたくて、したわけではないが、それではいま村が一番困っていることは病人が多く、それに日照り続きで難儀をしているので、早く疫病がおさまり、雨が降るようにお祈りしてもらえないだろうか」といったようなことを遠慮がちに頼みました。
行者様はさっそく「では、叶えられるかどうか、わからないが、一生懸命にお祈りしよう」と引き受けてくれましたが、しかし「私が祈っている間、絶対にこの寺には近づかないことを約束して欲しい」と言い、竜海寺の門を固く閉ざして、中に姿を消しました。
その夜のこと、この村に天地を揺るがすかと思われる雷鳴と豪雨が襲いました。驚いた村人たちは、青白く光る稲妻の中に眼光鋭い竜が上空に躍る姿を見ました。
まんじりともしなかった村人たちは、行者さまのお陰で雨が降ったと、夜の明けるのを待ち構えてお礼に出向いてみますと、すでに行者の姿はなく、本堂の中ほどにびっしょりと濡れた、一枚のござがあるだけでした。
まもなく、村には疫病もなくなり、平和で静かな村に戻りましたが、そこで誰言うともなし、あの行者こそ竜神様の化身だということになり、お宮を建ててお祀りすることになりました。それが八坂神社で、いまでも七月にお祭りしています。
山梨県連合婦人会 編集・発行(平成元年)「ふるさとやまなしの民話」