1171│貉の婆

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ソース場所:韮崎市清哲町青木

●ソース元 :・ 土橋里木(1975年)全國昔話資料集成16甲州昔話集 岩崎美術社    
       ・ 土橋里木(昭和28年)「甲斐傳説集」山梨民俗の会    
●画像撮影  : 201年月日
●データ公開 : 2017年01月05日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他   : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。

 

[概要]

六〇 貉の婆
一人の狩人が山奥で日が暮れて困っていると、向こうの方に火が一つ見える。その火を頼りに行って見ると、岩山の上に白髪のお婆が一人坐って、傍に百匁蝋燭を明るくつけ、ブンブンと糸車を廻して糸を取っている。こんな所に人間のお婆が糸をとっているべきはずはないから、これは化け物に違いないと思って、狩人は急いで鉄砲でそのお婆をぶった。するとお婆は、
今夜も一つテンコロリン
と言いながらヒョイと手を出して、弾丸を掴んでしまった。いくらぶっでも、お婆に命中するにはするが、そのたびにお婆は「今夜も一つテンコロリン」と言いながら、弾丸を手で掴んでしまう。狩人は持ってるだけの弾丸をみんな取られてしまい、怖かなくなって家に逃げて帰った。
そしてまた弾丸をたくさん作り、今度は切子玉をも拵え、それに神様の名を切りつけて、また山へ登って行った。こないだの岩山の所へ行くと、今夜も白髪のお婆が、百匁蝋燭をつけて糸車を廻している。狩人が狙って撃つと、やはり「今夜も一つテンコロリン」と言いながら、お婆は弾丸を手で掴んで取る。そうしてだんだん弾丸を取られてしまって、終いには切子玉が二つ残るばかりとなった。
そこで狩人も考えて、いくら弾丸があたってもお婆は何ともない所を見ると、あれは正体じゃアない。化け物の正体はかえってあの蝋燭かも知らぬ。あの蝋燭がどうも怪しいと思って、二つ残った切子玉を一度に鉄砲にこめて、今度はお婆の傍の百匁蝋燭を狙って一発ぷっ放いた。するとたちまち火が消え、エライ山鳴りがして化け物は下へ落ちた。夜が明けるのを待って狩人が行って見ると、そこには一匹の大い古貉が死んでいた。       (昭和十四年四月九日 河野市松氏「五十七歳])
土橋里木(1975年)全國昔話資料集成16甲州昔話集 岩崎美術社
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糸取貉     北巨摩郡清哲村
昔、鳳凰山中南小室の小屋で、夜になると一人の老婆が来て、何か口唄を唄いながら糸車を廻していた。或る夕方猟師が覗いて見ると、老婆が顔中の皺を一度に動かして、ニタリと笑う様は実に物凄い。猟師は老婆を鉄砲で打ったが、行燈が消えただけで手応えがなく、次の夜も相変わらずブンブン糸車を廻している。今度は老婆の傍らの行燈を狙って打つと、行燈が消えると同時に、キャッと云って怪物が外へ飛び出した。それは貉で、その後は糸取婆も出なかったという。     (口碑伝説集)
土橋里木(昭和28年)「甲斐傳説集」山梨民俗の会
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切子玉・・・古墳時代後期の墳墓から出土する玉の一種で、水晶を細長いそろばん玉の様な形の多面体にしたもので、装身具に用いられた。 猟師はドラキュラ退治に銀製の弾丸で撃つ様な、神的武器として切子玉の弾丸を用意したと話者は話したのだと思う。

このデザインソースに関連する場所


韮崎市 鳳凰山
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