物語
Old Tale
#1218
七面堂と三ヶ村堰
ソース場所:北杜市長坂町長坂上条1348 妙要寺
●ソース元 :・ 長坂町教育委員会(平成12年)「長坂のむかし話」 長坂町役場
●画像撮影 : 2015年02月13日
●データ公開 : 2017年07月31日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他 : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。
【概要】 八ヶ岳山麓は豊かな湧水が随所に見られ、水の豊かな地のようなイメージがある方も多いかと思いますが、古代の八ヶ岳噴火の影響で、水はけの良すぎる場所でもあります。湧水からほんの少し離れた場所では、晴天が続くと途端に旱魃に苦しんできた歴史があります。なので、昔から湧水を大切にすると同時に長い年月をかけて用水路を切り開いてきました。そして、水を守る神様は地域と密着し、崇拝されてきました。こんにち、八ヶ岳山麓に水に恵まれた豊かな地となったのには、先人の努力とそれを力づける水の守護神の賜物でしょう。
七面堂と三ヶ村堰 (長坂上条)
長坂上条区の北の小高い山の中腹に妙要寺という寺があります。本堂の西に建つ七面堂には、水の守護神として地域の人々から崇拝されている七面大明神が祀られています。昔から毎年8月17日から18日にかけて、三ケ区(長坂上条、長坂下条、渋沢の三区)の人々によって水の恵みに感謝する水神祭が行われてきました。祭りの日には、お堂の周囲には露店が並ぴ、浪花節や芝居などの興行もあり、特に17日の夜に打ち上げられる花火はことさら見事なものであったということです。
現在三ヶ区で使われている灌漑用水は、昔の人が切り開いた10kmに及ぶ用水路(三ケ村堰という)によって女取湧水や三分一湧水などから引いてきたものです。三ケ区にこれらの湧水の水を利用する権利(水利権)が認められたのは江戸時代の初めのころといわれていますが、それから四百年たった現在まで、人々は水路の見まわりや補修をして米づくりに大切な水を守ってきました。
さて、七面堂前の庭園には、三代目になるという一本の百日紅(さるすべり)の木が植えられていますが、この木にはつぎのような話が伝わっています。
百日紅は、八十八夜から百日目に花が咲くのでその名がついたといわれます。そしてこの木の花は稲の花によく似ているので、人々は百日紅の花の咲き具合によって稲作の豊凶を占ったそうです。稲の花は八十八夜から百十日目に咲くといわれていたので、一足早く咲く百日紅の花で稲作を占ったというわけです。8月18日の祭りの日、農民たちは、どんな気持ちで百日紅の花を見たのでしょう。
いま七面堂の高台に立つと、眼下にはきれいに基盤整備された水田が広がっています。 (中津袈章・『長坂上条区誌』)
長坂町教育委員会(平成12年)「長坂のむかし話」 長坂町役場
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山梨各地に伝わる昔話や伝説、言い伝えを収録しています。昔話等の舞台となった地域や場所、物品が特定できたものは取材によって現在の状態を撮影し、その画像も紹介しています。