物語
Old Tale
#1244
二羽がらす
ソース場所:早川町奈良田
●ソース元 :・ 「早川のいいつたえ」第二集 三井啓心:著 (株)上田印刷所:出版者 昭和62年8月1日発行
●画像撮影 : 2016年06月21日
●データ公開 : 2017年10月19日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他 : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。
[概要] 早川町奈良田で採話されたお話。山深く他の地域との接触が薄かった奈良田の地は、奈良時代の孝謙天皇が静養したと伝えられ、不思議なお話が伝わる土地です。 奈良王様(孝謙天皇)がこの地においでだった時、烏たちが畑の物を食い荒らして村人たちは困っていました。そこで、奈良王様が烏たちを集め「人間の作っているものを食べてはいけない」ときつく言いつけた。しばらくしてまた烏たちを集め、腹の中を調べたら、二羽だけは山葡萄しか口にしていなかったが、他の烏たちは相変わらず畑の物を食べていたので、奈良王様はお怒りになり、約束を守った二羽を除いた烏たちを奈良田から去らせた、なので、奈良田には今でも二羽のカラスしかいないという。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
二羽ガラス(奈良田のいいつたえ)
早川町の面積は、参万八千ヘクタールと広いですが、そこの水をすべて集めているのが早川で、その川は奈良田のかみから、野呂川と名をかえます。
この集落の昔の衆は、焼き畑で粟や稗をつくり、生活用具はすべて手づくりで、つつましく暮らしていました。
そうした用具は、今、町の資料館でみることができます。
カラスという鳥は、とてもいたずら好きですが、奈良田にすむカラスも、おなじたぐいだったようで、村の衆が汗水たらしてつくる作物を、ほじくったり、食べちらかしたりして困らせていました。
見かねた村の守り神、奈良王様が、村中のカラスを集めて、「おんしんとう(あなたたち)は、村の衆が苦労して作る穀う、くうちゅうにゃいかぬよ(食べるというわけにはいかない)。」ときつく申しわたしました。
何日かたって神様が、この申しわたしが、どのくらい守られたか、たしかめました。
一羽一羽、大きく口を開けさせて、中を調べると、二羽だけは、山ぶどうや、木の実のかけらが見えましたが、なんとあとの全部のカラスに、粟や稗の粒がありました。
さあ、神様が怒ったのなんのって、「あれほどきつく申しわたしたのがわからんか、そんなわりい(わるい)カラスは、奈良田におくわけにゃあいかん。」と、二羽だけ残して追い出してしまいました。
それいらい、奈良田のカラスは二羽ということになっていましたが、時代もうつって、観光客も来るようになり、村の衆の出すごみも多くなってきました。
そうすればいつの間にかカラスもかえってきて、また増えはじめましたが、この頃では、神様も見てみぬふりをしていらっしゃいます。
(「早川のいいつたえ」第二集 著:三井啓心 出版社:㈱上田印刷所 より)
このデザインソースに関連する場所
Old Tale
Archives
物語
山梨各地に伝わる昔話や伝説、言い伝えを収録しています。昔話等の舞台となった地域や場所、物品が特定できたものは取材によって現在の状態を撮影し、その画像も紹介しています。