物語
Old Tale
#1246
もぐらと馬と人間
ソース場所:早川町奈良田 に伝わるお話
●ソース元 :・ 「早川のいいつたえ」第一集 三井啓心:著 (株)上田印刷所:出版者 昭和61年8月1日発行
●画像撮影 : 201年月日
●データ公開 : 2017年10月24日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他 : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。
[概要] 早川町奈良田で採話されたお話。 昔々、飢饉で困っていたモグラと馬と人間が、食べ物のことを話していた。モグラが「神様のお蔵には穀物がいっぱい入っているから、皆で盗み出さないか?」と云う。人間は「そんなことはしたくない」と云うので、モグラと馬が盗みに入った。二日くらいすると神様の前に三者は呼び出された。神様は人間には「お前は悪くないから、明るい娑婆で、作物を作って暮らせ」と種を渡した。馬には「お前は一生人間に使われて荷を運べ」といった。そしてモグラには「お前が一番悪い根性している、明るい娑婆に置いておくわけにはいかない。明日から地の中で暮らせ」と裁かれた。今でも人間は畑を耕し、馬は人間に使われ、モグラは地下で暮らしている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
もぐらが土の中で暮らすわけ(奈良田のいいつたえ)
昔から世の中には、いいことばかりはなかったよね、困ることはたくさんあったけども。なかでも、飢饉で食物がないほど苦しいことはないと思うね。
奈良田では、それをがし(ききん)といっています。
ある年、ひどい飢饉になって、人も動物もみんな困ったけれども、神様のお倉だけはたべものがいっぱいあることがわかったんだって。
その時、馬と人間が出会ってね、腹がへっているもんだから、すぐたべものの話になったところへ、もぐらが顔を出したんだって。
いやしいもぐらが「おい、神様のお倉からたべものをひん盗まだあ(盗もうじゃないか)。」といい出してね。
人間は考えたけど、いつも神様をおがんでいるから「そりゃできん。」といって抜けたから、もぐらと馬がお倉からたべものを盗み出して、馬の背中につけて、逃げたんだって。
両方ともそれでしらばっくれて(そしらぬ顔を)いたんだけど、神様のことだから、わからんはずはないよね、二日ばかりたって神様は人間と馬ともぐらを呼びだしたんだと。
かしこまっている三人に、神様がこわい顔をして、だれがお倉にしのびこんだか聞かれたら、みんなかくすことはできんから、あらいざらいしゃべってしまうと神様は、人間には「おんし(おまえは)別にわりい(悪い)ことあない、畑へ作物をつくってくらしてよい。」
馬には「おんしみてえなやつは、一生末生 人間にこきつかわれて、荷物を運べ。」
また もぐらには、「おんし(おまえ)の根性が一番きたない。そんなやつは、この明りいしゃば(明るい世の中)においとくわけにはいかない、土い(へ)もぐって一生くらせ。」といっただと。
人間が畑で作物をつくるのも、馬が荷物をつけて働くのも、もぐらが土の中でくらすのも、その時神様がきめたからだって。
(「早川のいいつたえ」第一集 著:三井啓心 出版社:㈱上田印刷所 より)
このデザインソースに関連する場所
Old Tale
Archives
物語
山梨各地に伝わる昔話や伝説、言い伝えを収録しています。昔話等の舞台となった地域や場所、物品が特定できたものは取材によって現在の状態を撮影し、その画像も紹介しています。