物語
Old Tale
#0356
お窯地蔵さん
ソース場所:北杜市高根町堤 「穴地蔵」
●ソース元 :・ 山梨県連合婦人会 編集・発行(平成元年)「ふるさとやまなしの民話」
●画像撮影 : 2015年11月12日
●データ公開 : 2016年06月24日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他 : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。
[概 要] 北杜市高根町堤のはずれに、石で作った窯の中に祀られた、とんがらし大好きなお地蔵さんがいらっしゃいます。とくに百日咳には霊感あらたかだそうです。今のように医療が発達していなかった頃、百日咳ですら命取りになるやもしれぬ病でした。咳き込み苦しむ我が子を抱え、どんなに心細い思いをしたことでしょう。そしてこのお地蔵さんへ願掛けすることで「きっと良くなる」と心に明かりを灯す事になったでしょう。
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お窯地蔵さん
八ツ岳の麓、高根町は堤集落のはずれにある松の根方に、ひっそりと祀られている御地蔵さんがあります。土地の人々は「お窯地蔵さん」とも「”なんばん”(唐辛子)地蔵さん」とも呼んでおります。
いつの頃からこの御地蔵さんが祀られているのかはわかりませんが、普からの語りつがれによりますと、御地蔵さんは石で造った窯の形の中に奥深く居られ、そしてお願い事をするには大好物の”なんばん”を何よりも先にお供えしたということです。
とりわけ風邪を癒してくださいましたが特に子供の百日咳を治す願いをよく聞きとどけてくださいましたから遠くの村人達もよくお参りに来たといわれています。
その名残りの情景は今から二十年くらい前まではあり、”なんばん” のお供えと共に線香の煙りが松の木の間に静かに立ちこめているのを通りすがりに見かけたものでした。けれども今は『願かけ』に御地蔵さんをわざわざ訪れる人もないようです。
多分、医学の進歩によって、百日咳で長くなやむ子供も少なくなったからではないでしょうか。
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御地蔵さんと共にあった松の大木が物語っているのは大昔、身近にお医者様もない不安のくらしの中で村人は心を寄せ合い素朴な神への願い事として総出で松の木を植え、窯を築いて祀り、無病息災と豊作を祈ったそのことでありましょう。
世代は移り変り、だんだんとその存在は忘れ去られようとしております。このことを言い伝えるのが今の私達のつとめと思うのです・・・・。 (高根町)
山梨県連合婦人会 編集・発行(平成元年)「ふるさとやまなしの民話」
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