0599│杓柄子流(富士河口湖町船津5 筒口神社・西桂町から都留市にかけてを流れる川)

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ソース場所:富士河口湖町船津5 筒口神社,柄杓流川

●ソース元 :・ 内藤恭義(平成3年)「郡内の民話」 なまよみ出版
●画像撮影  : 2015年11月04日(筒口神社)・2017年06月28日(柄杓流川)
●データ公開 : 2016年06月24日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他   : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。

[概 要]

杓柄子流
富士の北麓は熔岩と火山砂で埋まり、滲透性が強いため広大な山すそにありながら、沢水一つ流れを見せない。それなのに五つもの湖があって、澄んだ美しい水をたたえているのは、通水性のよい富士の土で濾過された清水が、湖底へ出て、こんこんと水を湧き出しているからである。
すり鉢のように山に囲まれた河口湖には注ぐ川もなければ出る川もない。、湖底のあちこちから水が湧いているというのに、ふえもしなければへりもしない。時には長雨や大旱魃で水位が大きく変ることがあっても、いつのまにかもとの水位にもどっている。不思議な湖である。
そのわけを、湖底に穴があって底知れぬ地底に吸い込むのだとか、白糸の滝へ抜けるとか富士山の下をくぐり富士宮の浅間神社の池に出るとか様々に噂していた。
川もなく井戸水も湧かない河口湖南岸の人々は、霊峰富士の水が湧き出る河口湖の水を霊水として使用していた。なかでも、筒口(河口湖町)と呼ばれるところには、湖底に穴があって水を吸い込むので、ゆるい流れができ特にきれいであった。
また熔岩がつき出ていて水が汲みやすく、近所の人達は飲用水や使い水として汲みにきた。
この筒口に水を汲みに来る一人に千代という娘がいた。親孝行で働き者の千代女であったが、その朝は少し寝ぼうしたので、そそくさと手桶を持って水汲みにやってきた。水汲み場には筒口神社が祀られており、共用の柄杓が備えられていた。いつもは神様に一礼してから柄杓を借りてくるのであったが、心がせいていたため、つい一礼するのを怠ったまま備え付けの柄杓を使おうとした。ところが柄杓は手からすべり落ち、あわてて拾おうとしたが渦と共に湖底に吸い込まれてしまった。
ことの次第を家人や近所の人に話すと、孝行者で働き者の千代女のことだからとがめもせず、かえって同情して探してくれることとなった。
「噂ではどこかへ抜けるとはいうものの、実際には渦で吸い込まれでもやがてこの湖のどこかの岸に浮き上っているだろう」と誰もが予想して湖岸を探し歩いたが、何度回り歩いても柄杓を発見することはできなかった。
神様から借りた柄杓であり、みんなの使う柄杓である。千代女は神に一礼するのを怠ったことを神に詑び、柄杓が浮かんでくるように祈った。千代女が水垢離をとりはじめてから間もなく、下暮地の者だという人が「筒口神社の総代さんは誰か」と、手に柄杓を持って尋ねてきた。総代が用件を聞いてみると「筒口神社の名が柄杓の柄に書かれているので、拾ったとはいえ神社のものをだまって使ってたたりでもあってはいかぬと思って届けに来た。」という。「どこでこれを拾われた」と聞くと「下暮地の尾尻淵の湧水だ」といった。
こうして噂されていた河口湖の水がどこかへ抜けているという話は事実であったと証明され、三ッ峠の東ふもとを流れる川は河口湖の水で、霜山の地下をくぐると判り、川は柄杓流川(しゃくながれがわ)と呼ばれるようになったという。

内藤恭義(平成3年)「郡内の民話」 なまよみ出版

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富士河口湖町船津5 筒口神社
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