物語
Old Tale
#0513
山の背比べ
ソース場所:富士吉田市 北緯 35度21分38.261秒 東経 138度43分38.515秒
●ソース元 :・ 内藤恭義(平成3年)「郡内の民話」 なまよみ出版
●画像撮影: 2013年1月29日
●データ公開: 2015年3月10日
●提供データ: テキストデータ、JPEG
●データ利用: なし
●その他: デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。
【概要】 大昔、富士山と八ヶ岳がどちらの方が高いかで喧嘩になった。あんまり両者がプンプン怒って噴火を繰り返すので、皆が迷惑し「見た目ではなく公正に高さ比べをしたらどうか」と仲裁が入った。そこで、富士山と八ヶ岳の山頂を樋で繋ぎ、中程にそっと水を流した。すると水は富士山の方へ流れ、八ヶ岳の方が高いことが証明された。勝利を喜ぶ八ヶ岳に富士山は腹を立て、頭に血が上り二つの間を渡した樋を振り上げ八ヶ岳の頭をバンバン叩いた。八ヶ岳の山頂はこれで凸凹になり、富士山より少し低く、頭が八つの峰に分かれた山になってしまった。
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山の背比べ
天地創造の神が、家来の女神浅間さんに向かって「日本中の山が見渡せるような高い山を造れ」と富士山を造ることを命じ、男神権現さんに向かっては「日本のまん中らしく、日本中の山を率いて行けるような大きな山を造れ」と八ヶ岳を造ることを命じた。
やがて二人の神様が造った山は、どちらが高いともいえない大きな山となった。こうなると、どちらが高いか神様だって自慢したくなるものである。やがて双方自分の方が高いとけんかを始めた。お互いに噴火を繰り返して相手をおどしながら少しづつ高くなった。おかげで溶岩が流れ出し、富士は猿橋まで溶岩流で桂谷が埋まり、八ヶ岳は韮崎まで七里岩の台地が造られた。
このままではあたり一面焼け野が原となり、ほかの山まで埋まってしまうので、山々の神様が相談して、神様同士のけんかの仲裁は仏様に限ると阿弥陀様に仲裁を頼んだ。
阿弥陀様は両方の神様に「あした高さを測って高かった方が日本一。朝日が差すまでに高さ比べをやめなさい」と命じた。
双方の神様は一晩中噴火を続けて土を積もらせ、夜明けとともに噴火をやめた。いままではお互いに相手の方が高いと判ると噴火していたので、その度に、どちらかが高くなったのはあたりまえ。今度は同時に噴火比べするのだから12時間もすればかなり差がつくだろうとたかを括っていた阿弥陀様であったが、朝起きてみて驚いた。甲府盆地の中央に立ってみても御坂峠のてっぺんからみて
も、富士山へ駆け登ってみても八ヶ岳へ駆け登ってみてもどうにも高さがわからないのである。裁定役を請けた以上裁定は下さねばならぬ。止むなく阿弥陀さんはちょっと苦労だがこれは水盛りの方法しかないと判断し脇侍の観音勢至に手伝ってもらって長い長い樋を作り苦心して両方の山の頂上から頂上へと樋を渡し、真ん中へ水を注いでみると、水は富士山の方へと流れていった。勝負は判然とした。
ところが富士の女神は、夫のニニギノミコトに身の潔白を証明するために、燃えさかる火の中に入って子を産んだくらいの気性の強い神様であったので、負けた悔しさに我慢がならず、うっぷん晴らしに阿弥陀様のかけた樋を振り上げ、八ケ岳の頭を思い切りめちゃくちゃに、自分より低くなるまでたたいたのである。
八ヶ岳のてっぺんは土が飛び散り、でこぼこにへこんで、八つの峰に分かれてしまった。八ケ岳はすっかりしょげかえってしまって、その後噴火することはなかったが、富士山の方はそれでもまだ気が収まらず、しばしば噴火を繰り返していたが、宝永四(一七〇七)年の噴火を最後に、どうやら気持ちが収まったようである。いまではチャッカリと平和のシンボルとなっている。
「郡内の民話」 文・内藤恭義 なまよみ出版
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