物語
Old Tale
#1241
ピピンピヨドリ(南巨摩郡早川町奈良田に伝わるお話)
ソース場所:早川町奈良田
●ソース元 :・ 土橋里木(1975年)全國昔話資料集成16甲州昔話集 岩崎美術社
●画像撮影 : 201年月日
●データ公開 : 2017年10月19日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他 : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。
[概要] 早川町奈良田で採話されたお話。昔々、山小屋におじいさんとおばあさんが住んでいた。ある雪が降って寒い朝、ヒヨドリがこごえているのをおじいさんが見つけ、息を吹きかけ温めてやった。するとヒヨドリは元気になって、おじいさんが大きな口を開けた拍子に、口に飛び込みお腹の中にまで入ってしまった。そしたらおじいさんのおへそからヒヨドリのしっぽが出て来たので、それをちょっと引っ張ってみた。そうしたらお腹の中でヒヨドリが愉快に鳴く。面白がって村の人達に聞かせているうちに評判になって、お殿様の前で聞かせる事になった。いつも通りしっぽを引っ張ると前より良い声で「ピピシピヨドリ、ゴヨノオタカラ、ピッサーヨー」と鳴いたので殿さまは喜んでおじいさんに沢山の褒美をとらせましたとさ。
ピピンピヨドリ
昔々、ある所になァよー、お爺さんとお婆さんが、山小屋に住んでーとーだげのーに。(まァ)ある雪が降って寒い朝げ、お爺さんが川戸ィ顔オ洗いに行ったいぱ、そこの切株にヒヨドリが一羽止まって、震えてーとーだげのーに。(まァ)お爺さんは可哀気に思って、ヒヨドリオつかまいて、ハーッと息オ吐きかけて、暖[ぬく]めてやっとーだげのーに。(まァ)そうしたいぱ震えてーとーヒヨドリが元気になって、お爺さんが大[いか]い口をあけとオ拍子に、口の中イ飛びこんで、腹ン中まではいってひっちまっとーだげのーに。(まァどうなるづら)
そうしていんめぇ(少し)たったいば、お爺さんの臍いシッポがつん出いとーどーで、それオ引っぱったいば、「ピピンピヨドリ、ゴヨノオタカラ、ピッサーヨー」ちて(と言って)鳴くだげのーに。いく度引っぱって見とーッて、同じによい声で鳴くどーで、お爺さんは村イ帰って、「俺が臍ァヒヨドリのぐに(ように)良い声で鳴けーるだい」ちて法螺ァ吹いて歩っとーだげのーに。(まァ)それオ聞いとオ村の衆が、「さア鳴かせてみんな」ちえーば(と言えば)、蔭でそっとシッポォ引っばっちゃア鳴かせて、村の衆をおべーらかいとー(びっくりさせた)だげのーに(まァ、それでも)。
そうこうしてエるうちに、その評判が殿様の耳イはいって、お爺さんは殿様の前さ呼び出されて、「早く鳴かせて見ろ」ちてやァれとーどーで(言われたので)、いつものように臍のシッポォ引っぱったいば、前よりゃア良い声で「ピピシピヨドリ、ゴヨノオタカラ、ピッサーヨー」ちて鳴いとーだげのーに。(まァ)殿様ァえらく褒めて、褒美に宝物オがいに(たくさん)くれとーどーで、お爺さんは大金持になっとーだげのーに。これでヒッチマイ。 (南巨摩郡早川町奈良田 深沢正志様〔三十五歳〕)
途中の(まァ)、(まァ、それでも)等は、聞き手が発する相の手(相槌)である。
全國昔話資料集成16 「甲州昔話集」 編・土橋里木 岩崎美術社 より
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