1114│稲積神社裏の大入道

ソース場所:甲府市太田町10-2 稲積神社
●ソース元 :・ 甲府市HP「おはなし小槌」 より https://www.city.kofu.yamanashi.jp/senior/ohanashi/index.html
●画像撮影 : 2015年12月01日
●データ公開 : 2016年06月24日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他 : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。
[概 要]
稲積神社裏の大入道
(怪異奇説見聞録より)
遠光寺村に宮崎才助さんという豆腐屋さんがいた。遠光寺村の豆腐屋さんと云って太田町三吉町、遠くは車田(南若松町)湯田方面を得意として、なかなか繁昌していた。
才助老人がまだ若衆の時代のことだった。当時の伊勢町通りは、藁屋根が点在し、村の北には東側に竹藪の密生林があり、太田町公園のところなどは一連寺があるだけで望仙閣はもちろん人家がなく、樹木が生い繁って昼も暗いところだったそうてある。
ある夜更け、才助老人の家の前で七歳ばかりの男の子が泣きじゃくっていた。
そこへ、遠光寺村の銭湯から帰る途中の四十ばかりの男が通りかかり
「おまえはなぜに其の様に泣くのであるか。」
と尋ねる。
「俺は車田の者で、蒟蒻を買いに来たのであるがこの処迄来ると銭を失くしてしまった。買って帰らねば家人に怒られるし、銭は見当たらず困って泣くのである」と云う。
其の男は
「それは可愛想な話しである。それでは俺が買ってやろう」と才助老人の家から蒟蒻を買い求め、其の子どもを家まで送ってやろうとした。
太田町公園に入り、今の稲積神社の裏手迄行った時であった。
その子どもは「叔父さん、もうここまで送って貰えば結構だよ」と言うかと思うと其の姿は掻き消す如に失せてしまった。
何をしたことかと其の人が薄気味悪く驚いていると、見るからに恐ろしき大入道が面前に顕われて「今の蒟蒻のお金を返す」と云うて羽団扇の様な大の掌に一文銭を二つ乗せて突き出した。
男は驚いたの愕かぬでは無く飛び上がる程恐ろしくなって一目散に逃げ帰ったのである。
そして家の雨戸を開ける間とて無く無我無中に蹴破リ、台所にうち倒れたまま、人事不省になってしまった。
それから家の者はもとよリ、近所の者も寄り集まって看護する。その甲斐があってようやく生気になったが、その後は病人となり果て病床に伏すようになった。
これが原因になってまもなく死んでしまったとの話である。
この話は、その人が生気づいたとき一度話したばかりで、多くの人から問われる度に頭を振って「恐ろしいから聞かないでいてくれ」と云っていたそうである。
甲府市HP「おはなし小槌」 より
https://www.city.kofu.yamanashi.jp/senior/ohanashi/index.html