0386│逆さ銀杏

ソース場所:南巨摩郡身延町下山279 上沢寺
●ソース元 :・ 土橋里木(昭和28年)「甲斐傳説集」山梨民俗の会
●画像撮影 : 2015年07月27日
●データ公開 : 2016年06月24日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他 : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。
【概要】 日蓮伝説。その昔、富士川町小室の辺りは真言宗の勢力が強かった。ここへ日蓮が訪れ蛭に困っている人々を法力で助けた(アーカイブ0392「土録の蛭」)。これにより日蓮が、人々の心をつかんだ事に怒った真言宗の高僧(恵朝とも善智とも伝わる)は、日蓮と仏法を論議し打ち負かそうとしたが、日蓮に負けてしまった(アーカイブ0336「法論石」)。ここで負けた事をうらみ彼は日蓮の毒殺を企てたが、是もまた失敗してついに日蓮の弟子となった(アーカイブ0386「逆さ銀杏」)。
逆さ銀杏 南巨摩郡下山村
上沢寺に太さ六抱えもある銀杏の大木がある。六百年前 日蓮上人が身延入山の頃、穂積村小室山の善智法師(真言宗)が上人と法論をして負け、それを恨んで弟子に命じて日蓮を上沢寺に招じ、毒の萩餅を出した。日蓮は庭に遊んでいた白犬に餅を一つ投げ与えたところ、白犬はそれを一口食べて、黒血を吐いて悶死した。両僧は隠しきれず前非を悔い、宗旨を変えて日蓮に帰依し、その弟子となった。日蓮は身代わりに死んだ犬を憐れみ、寺の境内に葬って、その上に持っていた銀杏の杖を突き立てた。その杖に根が生えて成長したのがこの大木で、枝が下を向いているから逆さ銀杏とも、又は毒消し銀杏とも呼んで、この木に触れただけでも、身体の毒が消えるといわれている。その葉を粉にして煎じてのめば毒消しになるといって、葉へ墨で梵字を書いたものを今も寺で売っているし又その実は安産の護符(お守り)になるといって、これも売っている。 (山梨県民新聞)
土橋里木(昭和28年)「甲斐傳説集」山梨民俗の会
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この逆さ銀杏はお葉つき銀杏とも呼ばれる。オハツキイチョウはイチョウの変種で、葉の上に実を結ぶ(雌株)、又は葉上に葯をつける(雄株)イチョウのことをいい、全国に約20本ほどの存在が知られている。
この逆さ銀杏は2018年9月に発生した台風24号の影響で、ほとんど根元から倒れてしまった。根の一部が生きているので養生再生を願っている。
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犬塔婆 南巨摩郡身延町
小室の開山日傳上人は、日蓮上人と禅問答をして、負けて弟子となったのであるが、その時日傳は身延山で、粟餅に鴆毒[ちんどく]を入れて日蓮にすすめた。日蓮は毒と知って喰わず、その粟餅を犬に与えると犬は忽ち狂死した。日蓮はその犬のために塔婆を立ててやり、今も身延山に犬塔婆というものがある由。 (甲陽随筆)
土橋里木(昭和28年)「甲斐傳説集」山梨民俗の会
@ この犬塔婆が身延山の宝物殿に保存されている。
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犬の塔婆
日蓮大聖人が善智法印に毒殺されそうになったとき、身代わりとなった白犬を大聖人が自ら供養されたと伝わる塔婆。
大聖人に法論で負けた小室の真言宗の僧 善智法印が、負けた腹いせに大聖人を毒入りの牡丹餅で毒殺しようとした事件があった。その奸計を見破った大聖人は、御草庵の庭先に遊んでいた白犬に「汝、この餅を食し私の身代わりに死すことあらば、永代供養すべし」とこの餅を与えてみたところ、犬は忽ちに苦しんで悶絶し、ついに血を吐いて死んでしまった。その犬を大聖人御自ら供養されたのが本塔婆である。
江戸時代の記録では2本あったようであり、さらに元々は大木であったようである。その威徳霊験にあやかって仏像などにするために削り取られていき現在見られるような形で今日に伝わっている。
身延山宝物館展示説明より(長さ六尺ほどの材木、説明の通りあれこれ削り取った跡が残る。宝物館展示品のため、展示内容が時々変るのでいつも見られるとは限りません)
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他のお話とも関わる物語なので、簡単な流れを記載します。
その昔、富士川町小室の辺りは真言宗の勢力が強かった。ここへ日蓮が訪れ蛭に困っている人々を法力で助けた(アーカイブ0392「土録の蛭」)。これにより日蓮が、人々の心をつかんだ事に怒った真言宗の高僧(恵朝とも善智とも伝わる)は、日蓮と仏法を論議し打ち負かそうとしたが、日蓮に負けてしまった(アーカイブ0336「法論石」)。ここで負けた事をうらみ彼は日蓮の毒殺を企てたが、是もまた失敗してついに日蓮の弟子となった(アーカイブ0386「逆さ銀杏」)。