1113│おぼう狐

ソース場所:甲府市国玉町1331 玉諸神社
●ソース元 :・ 甲府市HP「おはなし小槌」 より https://www.city.kofu.yamanashi.jp/senior/ohanashi/index.html
●画像撮影 : 2015年10月27日
●データ公開 : 2016年06月24日
●提供データ : テキストデータ、JPEG
●データ利用 : なし
●その他 : デザインソースの利用に際しては許諾が必要になります。
[概 要]
おぼう狐
(朝気三丁目 馬場信さんの話)
玉諸神社の森は、うっそうと茂り、昼でも薄暗く、女・子どもは恐ろしげに足早に通り抜けるのでした。
その森におぼう狐が出て悪さをするという噂が広がり、日暮からは人通りもぷっつり途絶えた。
その噂を聞いた威勢のいいおじさんが「そんな馬鹿なことがあるか、俺がいってその正体を暴いてやらぁ」と夜になるのを待って出かけて行った。
お宮の境内に来ると煙管を取り出し、一服しながら狐の出てくるのを待っていた。
静まり返っていた森も夜が更けるにしたがい、風もないのに木立や葉はざわめき、ギャーという獣の叫ぴ声、パタバタと飛ぴ立つ野鳥の羽音で、不気味な様相を呈してきた。
「今に出てきてみやがれ、ふんづかめえてやるから」
おじさんは、何度も何度も煙草を吸いながら待っていた。
どのくらい経っただろうか、もう夜明けが近いのではないかと思う頃、ヒタヒタ、ヒタヒタと草履の足音が近づいてきた。
「出やがったな」と道端にでてみると十七・八の若いお女中が通り過ぎようとする。
「まてえー」と言うが早いか、ひっ掴んで化けの皮をはごうとした。
「何をなさいます。無礼でありましょう。」
と娘が叫んだ。
「何をこきあがる。てめえが狐で、人を化かすってこったぁーわかっているんだ。観念しろ。」
「あれー、誰か来てぇー、助けてぇー。」と娘は泣き叫んだ。
すると網笠をかぶった立派な武士が突然現れ
「無礼者。わしの娘に何をいたす。」
「大事な娘を狐と決め付け、こんなにひどい目に遭わせ、着物も汚してしまい、許さん。」
とかんかんに怒り出し、今にも刀で切りかからんばかりの勢いであった。さすがのおじさんも青くなって足が震えだしてしまった。
狐と勘違いしてしまったことを土下座して謝るばかりであった。
ちょうどその時、いやんばいに和尚さんが通りかかった。
「どうしたんだ」そう言って武士とおじさんの間に入ってくれた。
おじさんは、ほっとして、実はこれこおゆう訳で間違えてしまったと和尚さんに話した。
「そう言う訳だし、おれに免じて勘弁してくれないか」と和尚さんは謝ってくれた。
だが、武士は「娘をこんなひどい目に遭わせ、ただでは許さん」とえらい剣幕だった。
和尚さんはポンと膝を叩き
「そうだ、この男を今日からおれの弟子にする。それで勘弁してくれ。」
すると、武士は
「弟子にするという証拠を見せろ。口先だけでは当てにならん」と言いだした。
しばらく考えていた和尚さんは
「それでは、この男の頭を剃って坊主にしましょう。それでどうでしょう。」
さすがの武土も納得し、承知した。
いつの間に用意したのか、手桶にぬるま湯が扱んであった。その湯を頭につけ三人は替わりばんこに剃リだした。
「俺が先だ」「わしにも剃らせろ」「私にもさせて」そりやあ賑やかで、楽しそうに剃りあげてしまった。
おじさんは、その間、夢心地だった。帰りが遅いので村人三人が見に行ったら、竹藪の中で頭を虎刈りにしたおじさんがいい気持ちで寝ていた。
「おい、どうした」
村人達はおじさんを揺り起こして話を聞いた。
おじさんの頭からいやな獣の臭いがしている。
気になって回りを探したら箍の弛んだ顔を洗う桶にぬるま湯が入っていた。
よくみてみると桶に入っていたのは狐の小便だった。
雄雌三匹がぐるになっておじさんを騙し、坊主にさせてしまったという話です。
甲府市HP「おはなし小槌」 より
https://www.city.kofu.yamanashi.jp/senior/ohanashi/index.html